「あそこの嫁は何を…」“世間の目”におびえる日々
最も金子さんを追い詰めたのは、義父の「夜の徘徊」でした。
夕食後すぐに寝てしまう父は、真夜中の2時ごろに目を覚まし、真っ暗な外へと出て行ってしまうのです。側溝に落ちて怪我をしたり、転んで起き上がれず新聞配達の人に連れられて帰ってきたり…。
「お願いだから暗い時は出ないでください。明るくなったら一緒に出ましょう」
金子さんがそう泣いて頼んでも、父は鍵を開けて出て行ってしまいます。

傷だらけで帰ってくる父を見るたび、金子さんは『あそこの嫁は何をしているんだ。年寄りを夜中に一人で歩かせて』と誰かに責められているような幻聴に襲われたといいます。
睡眠不足と、「言うことを聞いてくれない」という徒労感。当時、携帯電話もなかった時代の唯一の救いは、親友に夜遅く電話をかけ、ただ愚痴を聞いてもらうことだけでした。「大変だったね」と言ってもらえるだけで救われたのです 。










