<センバツ高校野球 19日 1回戦 兵庫・阪神甲子園球場 青森山田対沖縄尚学>

青森山田は沖縄尚学に3対6で敗れ、全国制覇を目指した挑戦は初戦で幕を閉じた。青森テレビでは甲子園への取材を通して、春の全国制覇を目指した球児の思いと夏に再起をかける選手を紹介する。
1人目は乕谷朔ノ助投手。

センバツの大事な初戦、先発を任されたのは乕谷投手だった。去年夏の甲子園にベンチ入りしたものの、登板がなく、今大会が聖地初登板だ。16日のチーム練習では、甲子園での投球を心待ちにしていることを明かしていた。去年の夏で聖地のマウンドに上がった同学年の下山大昂投手からも経験談を聞き、イメージを膨らませていた。だからこそ、たどり着いたのは平常心でいることだった。

乕谷朔ノ助投手
「マウンドはマウンド。どこも変わらないので。東北大会の準決勝・決勝で先発したときは勝てば甲子園に近づくということを意識しすぎて緊張してしまった。だから、あまり意識せずにいたい」

それでも憧れ続けたマウンドは意識してしまう。だからこそ、下山投手から最初の一球、最初のアウトが大切だと聞き、実践した。

乕谷朔ノ助投手
「下山(投手)から最初のワンストライク、ワンアウトをとればかなり落ち着けると聞いたのでとにかく最初の一球、ワンストライクを大切にしたい」

初回、甲子園デビューを飾った乕谷投手が初球に選んだのは直球だった。
ただ、気持ちとは裏腹に投球が定まらない。
先頭を歩かせると、続く2番に犠打で送られ1死二塁に。3番新垣に左前打でチャンスを広げられて、1死一、三塁にピンチを招いた。

いきなりのピンチ。それでもこの冬に積み上げた自信が、乕谷投手を奮い立たせた。

4番比嘉を空振り三振にきってとると、5番阿波根を中飛に打ち取った。

絶対にこのマウンドを譲らないー。
胸に去来したのは去年の夏の記憶だったのかもしれない。

去年夏、乕谷投手はベンチ入りしていた。同学年の下山投手、菊池統磨投手が甲子園デビューするなか、登板機会を待っていた。

アピールのため甲子園期間中は練習日でレギュラー陣相手の打撃投手を買って出た。しかし、空回りしてしまう。当時の主将である橋場公祐選手の足へ死球を与えてしまうなど、練習ですら思うようなプレーができなかった。結局、去年の夏、甲子園のマウンドに立つことはできなかった。

悔しさが心身ともに乕谷を一回り成長させた。
選抜出場が決めてからは大好きなラーメンやおかしを断ち、筋力トレーニングに打ち込んだ。その成果は着実に実った。去年秋から体重は5キロ、球速も5キロアップした。

チームを指揮する兜森監督は3本柱の中での先発を乕谷に指名した理由として、制球力の良さをあげた。四球を出さず、テンポ良く投げ込むことが最大の武器だからだ。

この春は1試合のみ、結果は3回を1失点。役割は全うしたが、満足はない。

去年あがれなかった夏の甲子園のマウンドへー。立ち止まる時間はない。