深刻な大気汚染に直面するモンゴル。PM2.5は世界最悪レベルで、子どもたちの健康被害も起きています。日本も改善を支援していますが、原因はなんなのでしょうか。

気温がマイナス40度以下にもなるモンゴルの冬。遊牧民たちはこの寒さの中、伝統的な家屋「ゲル」で暮らしています。一方で…

遊牧民
「あっちはウランバートル。煙だらけだよ」

首都ウランバートルに入った途端、視界が悪化。主な原因はPM2.5で、濃度は世界で最も高くなる日もあります。深刻な「大気汚染」に直面しているのです。

日本の援助で建てられた病院。毎日多くの高齢者や子どもたちが呼吸器疾患の治療のため訪れています。

この男の子(3)は肺炎の一歩手前と診断され、入院しました。

母親
「(入院時は)咳がひどく、ほぼ意識が無い状態でした」

治療が遅れ、肺炎で死亡するケースも後を絶ちません。

モンゴル日本病院 アディルサイハン院長
「特に子どもたちは、咳や呼吸器系疾患がある場合(PM2.5により)重症化して肺炎になりやすいのです」

PM2.5の最大の発生源は、ウランバートルの半数以上の人々が住む、いわゆる「ゲル地区」。低所得者層が暮らすエリアで、近年、仕事を求めてやってくる遊牧民が増えているといいます。

去年首都に移住した人
「家畜が死んでしまい、来ました。今年も雪が多くて、家畜が犠牲になる雪害が起きています」

ここで安い石炭を使ったストーブが使われるため、PM2.5や温室効果ガスが排出されるのです。さらに…

記者
「集落の真ん中に小学校があり、こちらの教室は授業中ですけれども、マスクをしている子たちの姿が目立ちますね」

学校の窓にはフィルターが取り付けられていますが、外して洗うとこの通り。

生徒
「煙でつらいよ」
「空気がきれいになってほしい」

こうした状況の改善に日本も取り組んでいます。

JICA専門家 澤木夏二さん
「プロジェクトで製造したバイオマスコールブリケットの燃焼試験を実施しています」

PM2.5の排出を抑える新しい燃料の製造や、大気汚染の度合いをスマートフォンで見られるようにする技術支援も行っています。

ただ、「ゲル地区」の人たちが石炭を使わざるを得ないという問題が一番の原因。政府は、暖房があるマンションに移るよう促していますが…

ゲル地区に住む男性
「(マンションは)とても高いよ」

運送業のこの男性の収入は月8万円程度です。

息子
「外に出ると咳が出て、風邪が治らないんだ」

息子はこう訴えますが、貧困に直面するゲル地区の人々にとってマンションは手が出ないのです。

JICA専門家 田畑亨さん
「ゲルを減らして集合住宅にするとか、都市計画から根本的に見直さないと、なかなかできない。やっぱりそれには10年、15年の歳月がかかるのではないかと思います」

子どもたちが空気を気にせず遊べる日はやってくるのでしょうか。