◆習近平政権が危機感
これだけ自然災害、それに過失による災害が続くと、政権も危機感を抱く。このビル火災は午後3時半に発生したのだが、習近平主席はその日のうちに、指示を出している。「負傷者の治療に全力を尽くし、犠牲者家族へのケアを適切に行う必要がある」と、こんな指示を出した。
「これもまた、最近発生した重大な事故の一つであり、一刻も早く原因を究明し、法律に則って責任を追及し、深く反省しなくてはいけない」
「さまざまな事故の頻発を断固として抑制し、人民の生命と財産の安全、社会全体の安定を確保する必要がある」
習近平氏はただちに副首相を現地へ派遣した。事態を重大視している表れだ。
◆経済成長よりも「国家の安全」
今から紹介するのは、1月20日に中国政府が発表した自然災害の被害統計だ。2023年の死者・行方不明者は691人、倒壊した家屋は約21万戸、直接的な経済損失は日本円で約7兆円。この経済損失に関しては、過去5年間の平均と比べて12.6%増えたという。
生命だけでなく、国民の財産が自然災害によって、これだけ損なわれると「災難だった」「運が悪かった」というだけでは済まなくなるように思う。
最近、話題になっているインタビュー記事を紹介したい。昨年12月まで中国大使を務めた垂秀夫さんのインタビューが、月刊『文藝春秋』2月号に掲載されている。垂さんはこの中で、習近平政権について、こんな見解を示している。
「国家戦略目標、すなわちトッププライオリティの変化です。「トウ小平時代のトッププライオリティは経済成長でしたが、習近平氏はそれより優位のプライオリティを設定しました。それが、『国家の安全』であります」
「今の中国経済は実際相当悪い状況だと思いますが、習近平氏にとっては、国家の安全の方がはるかに重要。これは各国の外交官にもあまり理解されていません」
「国家の安全」が最も重要だという指摘は私も同じようにみている。垂さんはその具体例として、外国人も対象にしたスパイ防止法の厳格化などを挙げている。ただ、国内の不安要因が大きくならないように摘み取るという意味では、自然災害への対応、人災の防止も同じ線の上にあるといえる。
中国での最近の不安要因といえば、不動産バブルの崩壊だ。不動産大手の恒大グループに、香港の高等裁判所が、会社を清算するよう命じる判決を出した。実際に会社が清算されるかどうかは、中国本土の裁判所の判断によるが、そこには当然、中国当局の意向が働く。恒大グループに限らず、不動産はかなり落ち込んでいる。
盤石に見える習近平政権だが、「国家の安全」という意味で、2024年は不安を抱えるスタートになった。
◎飯田和郎(いいだ・かずお)

1960年生まれ。毎日新聞社で記者生活をスタートし佐賀、福岡両県での勤務を経て外信部へ。北京に計2回7年間、台北に3年間、特派員として駐在した。RKB毎日放送移籍後は報道局長、解説委員長などを歴任した。














