介護のために住宅をリフォームした際、費用の大半を給付する制度がある。ところが、この制度を悪用し、高齢者の自宅を訪問して不要な工事を行い、大阪市から現金を不正に受給したとしてリフォーム業者の男らが逮捕された。男らの悪質な手口について被害者が証言した。

大阪市の「介護保険制度」を悪用 被害者が語った『悪質な手口』

 7月14日、詐欺の疑いで逮捕されたのは自称・訪問介護員の佐藤春人容疑者(33)ら計3人。佐藤容疑者らは去年6月ごろ、大阪市内に住む80代の女性に対し、住宅リフォームのための現金を大阪市からだまし取った疑いが持たれている。
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 警察によると、佐藤容疑者らは本来必要ないにもかかわらず、手すりの取り付けなどのリフォーム工事をしていたとみられている。悪用したのは大阪市の介護保険制度だった。
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 この制度は、要介護の認定を受けた人が1~3割の自己負担で上限20万円分のリフォーム工事などを行えるものだ。その差額が市から業者へと給付される仕組みになっている。佐藤容疑者らは要介護の認定を受けるための書類を作成。高齢者などが暮らす住宅に不要な工事を繰り返し行い、市から不正に現金を受け取っていたとみられている。
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 今年7月、取材班は被害を訴える女性と接触することができた。大阪市内に1人で暮らす73歳のこの女性によると、去年3月に介護リフォーム会社の営業マンだという男が自宅を訪ねてきたという。

 (不要な工事をされたと訴える女性)
 「『こんにちは』って言って入ってきて、『介護のあれ(手続き)で回っています』とか言って、役所を通してきたのかなと思った。そうしたら『奥さん、介護の手続きはしていますか?したほうがいいですよ』と。『奥さん、お風呂でよく倒れて死んでいる人が多いから手すりをつけたほうがいいよ』と。けど、もう強引やよ」
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 男はその後、女性のかかりつけ医や個人情報などを聞き出してきたという。

 (不要な工事をされたと訴える女性)
 「『どこの病院にかかっていますか?』って聞かれたから、どこそこの病院にかかっていますって言って。『(男が書類を)書いてあげるわ』とか言うからな、目も悪いし書いてもらったらいいわと思ったけど、それが間違いやん。勝手に書類を作られて」
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 男は聞き出した情報をもとに介護保険の申請のための書類を勝手に作成。約1か月後、男は佐藤容疑者とともに女性の家を訪れ、風呂場と階段に合計5本の手すりをつけて帰ったという。

 (不要な工事をされたと訴える女性)
 「いらんところに(手すりを)つけられて、掃除する時も頭を打ったり。付け方もまっすぐじゃなくてちょっと歪んでいるし」