人生初の嬉し涙

イチロー氏が自ら買って出たノックに、1番手を志願した富永。次第に厳しいコースにボールが飛んできたが、必死に食らいついた。「きつかったんですけど、『元気を出せ』というイチローさんの言葉もありましたし、きついとかで諦めちゃいけないなっていうのは一番ありました」と当時の“スペシャルノック”を振り返る。

最後は“お腹から”声を出し、元気にイチロー氏に一礼。「しんどいですけどもう嬉しすぎて」。特別な経験に、人生初だという嬉し涙を流し、声を震わせた。

「ありがとうございました。いい思い出になりました」と感謝の気持ちを伝えたが、イチロー氏からは「思い出と違うから。頑張れ、頑張るためにこれやってるんだから。しんどくなったら思い出してもう一歩前へ」とエールを送られた。

「イチローさんから『頑張れ』っていう言葉だったり、こんなところで終わっちゃだめだよっていう感じでイチローさんは言ってくれたのかなって」。イチローさんの指導も、練習の日々も思い出で終わらせないと誓った。

夢は大学でマネージャー

夢の甲子園を目指した最後の夏は、静岡大会1回戦で敗退。富永はセカンドでスタメン出場しチーム唯一のマルチヒットを放った。「思い出」ではない、頑張るためにやりきった日々だった。

野球部を引退した富永は、今、明治大学への進学を目指している。「野球部のマネージャーを大学でやりたいと思っているので、東京六大学野球の強い明治大学に入って高いレベルの野球で自分が支える側になってみたい」と目を輝かせる。

富永くん

模試の結果に悩む日も、眠れない日もあるという。そんな落ち込んだ時、支えになっているのが、イチローさんと過ごしたあの時の映像だ。

「イチローさんの言葉を、動画を見てモチベーションをあげています。おそらく今だけじゃなくてこれからも活きてくると思います。野球がやっぱり好きなのでそれが一番大きくて、将来は野球に関わる仕事がしてみたいなと思っています」