沖縄に暴風警報が出た台風はことし、例年に比べ、かなり少ない2個でした。
しかしそのうちの1つ台風6号は、死傷者を出すなど県内に甚大な被害をもたらしました。台風6号を改めて振り返ります。
大雨、停電、断水 大規模な災害に

名護市のリゾートホテル近くのでは片側2車線の道路が冠水し、軽乗用車も水没。被害をもたらしたのは、台風6号です。
東シナ海に抜けたあと、進路を東寄りにかえてUターンする様にノロノロと進んだ台風6号。7月31日から8月7日まで実に8日間かけて沖縄地方に影響をもたらしました。

沖縄気象台によると、久米島町の8月の降水量は平年と比べおよそ4倍と統計開始以降、最大を記録。沖縄地方としても平年のおよそ2倍と最も多くなりました。
停電被害にあった家庭
「ちょうど見えると思うんですけど。こういう風に今もう停電しているんで。ブロックアイスで冷やしている状況になっていますね」
台風6号による停電。電気を使う医療機器が欠かせない子どもがいる家庭では…
医療的ケア児がいる家庭
「私も停電に気づかなかったので。部屋が暗くて、ずっと電源を入れてもつかない状態。そこで初めて停電だと気づいて。これだけ長い時間、停電が起きたことが初めてなので、気づかされる部分が多かった」
暴風の中、電気を求めて親類の家に避難し事なきを得ました。

停電被害は最大で21万5800世帯。渡嘉敷島では最長で6日と22時間にわたって停電。その影響もあり、13市町村3万3419世帯では断水もおこりました。
「便の変更手続きを待つ人で、長い列が出来ています」

空の便では2195便が欠航し33万5966人に影響が出ました。
この台風6号は“平和の象徴”にも、容赦なく猛威を振るいました。
「8月3日の朝、この状況を見て大変ショックだった」

伊江島を代表する戦争遺跡、ニーバンガズィマール(ガジュマルの木)。当時、敗戦を知らなかった日本兵2人が戦後2年に渡って身を隠した木です。
劇作家・井上ひさしの原案で舞台化もされ、沖縄戦の実相を全国に知らしめました。
RBC取材班は今月、ガジュマルを管理する宮城さんを訪ねました。
宮城孝雄さん
「こちらが生き残りというか。幸いにして少し離れていたから。生き残った」

4つの株から成っていたうち1株が残り、葉を茂らせていました。
しかし再び台風が来れば、心もとないと思いきや、隣には…
宮城孝雄さん
「それなりのものを復活させようと。かつての木に近いようなものを運んできて、移植した」
近所のミースィ公園から70トン級のガジュマルを半分にして移植。
宮城孝雄さん
「この木は本当に島のシンボルで。復活のためにやってあげないといけないと思って、頑張ったんですよ」
1代目と2代目が絡み合いくっ付く中で、かつてのようになることを願います。
さらにー

宮城孝雄さん
「実はこれ、倒れた木を材料にして。コカリナを作りたいと」
東欧ハンガリーの木の笛を独自にアレンジした楽器「コカリナ」。その生みの親の黒坂黒太郎さんは、東日本大震災で被災した松などを「コカリナ」として甦らせてきました。
ガジュマルの倒壊を知り、同じように蘇らせてくれたといいます。
宮城孝雄さん
「本当にびっくりです。まさかガジュマルが楽器になると考えていませんでしたから。本当に見事です」
目標は「てぃんさぐぬ花」が吹けるようになることですが、まだ道半ば。一度は息絶えたかと思われたガジュマルがいま新たに甦り、沖縄戦を語り継いでいきます。