娘に性的虐待…父はなに語る

この日、二人は父親に結婚の報告をすることに。私たちは直接、父親の話を聞くため同行した。3時間かけて富山までやってきたが…

里帆さん
「顔を見たくないよね。体調崩したくないし」

佳樹さん
「そうだね…」

ひどい仕打ちを受けたとはいえ、実の父親だ。「結婚の報告はするべきだ」と意を決して来たものの、やはり父親には会えない。

佳樹さんだけで会うことになった。佳樹さんによると、まず父親に里帆さんと結婚したことを伝えた。さらに、今後について話し合おうとしたものの、父親は記者が同行していることを知り席を立った。

父親
「告訴状でも出せばいいでしょう」

佳樹さん
「開き直るんだ?」

父親
「結婚の挨拶って言うから来たら、なんだよこれ」

佳樹さん
「結婚の挨拶だよ。すぐ近くまで。さっきまで里帆があんたと会うかどうかずっと悩んでいる。結婚の挨拶をするのに、どうするかずっと悩んでる」

父親はそのまま去っていった。この2週間後、告訴状が受理された。

「もう誰も理不尽に尊厳が奪われない社会に」

2023年10月、里帆さんは富山県に来ていた。警察に説明するのはこれが4回目だ。4時間後、警察署から出てきた里帆さんの表情は明らかに沈んでいた。

里帆さん
「ちょっと部分的に記憶が、変に戻ってきちゃっているので。そのことを私は警察に行く前に危惧していた事だったので。それが実際こうやって起こってしまうと…パニックですよね、いま」

警察への説明の後はいつも、蓋をしてきた記憶が呼び戻され苦しくなる。それでも声を上げるのは、世の中に訴えたいことがあるからだ。

里帆さん
「父のやった事というのが、みんなの考えるきっかけになってくれたらいい。誰が悪いよね、とかそういうことじゃなくて、『なんでこれが起きて』『自分の家だったらどうやったら起きなくて』、何よりも『自分の周りの人にも起きているんじゃないか』という視点を本当に持って欲しい。言わないだけで多分いますから、絶対」

もう誰も理不尽に尊厳が奪われない社会に。23歳の切なる叫びだ。父親はこれまでの取材に対し答えていない。