アメリカの国連本部で開かれていた、核兵器禁止条約の会議は、核の廃絶を訴える宣言を採択して終了しました。しかし、会議には今回も、被爆国・日本の姿は無かったのです。

「世界の記憶」に被爆の実態を―

1945年、広島の原爆が炸裂しておよそ2分後…。地上から“最も早く”原爆の「きのこ雲」を記録した写真とされています。

その色は「赤と黒の絵の具を混ぜような色だった」と語るのは、撮影者である山田精三さん、95歳。

元中国新聞記者・山田精三さん
「人類にとって貴重な写真だと思います。原爆の恐ろしさを感じてもらえれば、一番いいんじゃないか」

11月28日、政府はこの写真を含む1500枚以上の写真や、映像を、ユネスコの「世界の記憶」に推薦することを決定しました。

映像には病院で治療を受ける女性。放射線で髪が抜け落ちた子ども…被爆の惨状が数多く収められています。

第2回核兵器禁止条約 締約国会議

そうした中、11月27日、ニューヨークの国連本部で、2回目となる「核兵器禁止条約」の締約国会議が始まりました。

核兵器の開発や保有、使用などを全面的に禁止するこの条約はおととし発効し、すでに93の国と地域が署名。しかしアメリカやロシアをはじめとする、核保有国は参加していません。

また、アメリカの「核の傘」の下にあるドイツがオブザーバー参加している一方、同じ立場の日本は、唯一の被爆国でありながら、参加を見送っています。

会議に登壇した長崎の被爆者・木戸季市さんは…

日本被団協・木戸季市事務局長
「核戦争の危機が高まっています。ウクライナとガザから伝えられる光景は、被爆者にとって“あの日”の再来です」

今、この世界に新たな「核の脅威」が迫っていると訴えました。

アメリカの核意識

実際、ロシアはウクライナに対し核の脅しを行い、イスラエルはハマスとの戦闘で、閣僚が「核兵器使用も選択肢の一つ」だと発言。

ところが11月29日、発電所の視察に訪れたアメリカのバイデン大統領は、作業員が持つ機器を見て…

アメリカ・バイデン大統領
「私に随行する海兵隊員は、世界を粉々に吹き飛ばす暗号を持っている。でもそのボタンは核兵器(のボタン)ではないでしょう?」

冗談交じりに自分が持つ「核のボタン」と比較。自国で核兵器禁止条約の会議が開かれている最中の発言とあって、波紋が広がりました。