山口県内でクマの目撃・痕跡情報は28日時点で397件と過去2番目に多くなっています。現状と対策を取材しました。

美祢市美東町の赤郷地区の山林。山を登っていくと。

猟友会所属の男性
「この木ね、これを倒してるんよね。それでこの木、これも倒してるんよ」

今年4月中旬、この地区の猟友会の男性がイノシシやシカを捕獲するために仕掛けたわなに体長1メートル35センチ、およそ90キロ、オスのツキノワグマがかかりました。

猟友会所属の男性
「こういう木の下に隠れとって僕がぽっと行って、ぽっと立たれたら、ちょっとやられているかも。けがしていたかも」

クマはスギの木にしかけたわなにかかり、逃げようと抵抗して木が2本倒されました。爪痕も残っています。

猟友会所属の男性
「見た瞬間クマと思わなかった。びっくりした。2、300メートル先に家がみなある。午前11時ごろに歩きよるのは、考えられんよね」

捕獲されたのは国道からおよそ20メートル登った場所。このクマは駆除されたということです。男性によると、赤郷地区では去年10月にも子グマが捕獲されたそうです。

県内では、今年度、クマの痕跡発見や目撃情報が相次いでいます。学校のグラウンドに足跡。柿の木を折られ実が食べられているのが発見されることもありました。

同じ赤郷地区で30年以上林業に携わっている苗木の生産者、堀田勝利さんは森林の現状にその一因があると考えています。

堀田勝利さん
「本来獣が住むような奥深い所にそういうどんぐり類とか雑木があったり山の尾根がそうであったりするのが適正なんですけれども、今スギ、ヒノキが結構ふもとから上の方までずっとスギとかですね、樹種の選択が適正じゃない所が多いです」

戦後、日本は経済活動を優先し建築用のスギやヒノキを植えていきました。そのため、クマのすみかになる森林は増えた一方でどんぐりなどのえさ場が減ってきていると言います。「森林作りを見直す時がきている」と感じています。

堀田さん
「山を見直す、山のようは適正な場所に適正な樹種を植える。しかも近年は放置林が増えていて。獣にとっても人間にとってもあんまり意味をなさない山というか山林が増えているんですよね。そこをちゃんと手入れをしてやって、植えてやってっていうことをすることが一番近道なんじゃないですかね」

新型コロナの影響で森林の管理が行き届いていなかったことも原因のひとつではないかと考えています。

堀田さん
「コロナ禍で結構林業、山の中を切ったり、植え替えたりっていうのがしばらくちょっとストップしていたんですよね。特に山深い国有林なんかは、それも一つあると思います。人間が近づかないのでクマも自分たちの範囲がよく分からないっていうのもあると思います」