先日は50年以上前に解散したビートルズの新曲がリリースされたが、今度は漫画だ。没後34年を経てあの手塚治虫の新作が発表された。AIと人の共同作業によって完成した名作『ブラック・ジャック』40年ぶりの新作だ。完成した作品は手塚らしさが十分に感じ入られるものだった。手塚治虫の世界が蘇ることなどは喜ばしい限りだが、進歩はいつもいいことばかりではない。AIには危なさもある。

40年ぶり“手塚治虫の”「ブラック・ジャック」ができるまで

2023年7月。慶応大学の栗原聡教授の研究室には手塚治虫の息子でクリエーターの手塚眞さんや映画監督の林海象さん、脚本家の舘そらみさんらが集まっていた。栗原教授の研究室が何十時間もかけて手塚作品を読み込ませたAIを使って、それぞれのグループがブラック・ジャックの新作を作り上げる試みの始まりだ。まず人間が「ラブストーリー」「中東」「動物も出て来る」など、大まかなシチュエーションや条件をAIに指示すると、それに沿ったようなストーリーがすぐに画面に提示された。

今回はAIの主な役割はストーリーやキャラクターを担当し、その後人間が作画やコマ割りなどを行っていく。AIとやり取りをした舘さん。はAIとの会話の仕方によっては相手(AI)が勘違いをすることもあったという。

脚本家 舘そらみさん
「意外と暴走するな、というか、それこそこっちの聞き方ひとつですけど、『ああ、こう取られちゃったんだ』とか、そういう部分がかなり多いので、AIとのコミュニケーション能力を問われるみたいな感覚はすごくあります」

しかしキャラクター作成などにはコミュニケーション能力はいらないかもしれない。今回の漫画に登場する人物の作成には研究室の学生の写真をAIに読ませた。すると手塚治虫が描きそうな人物が瞬時に何種類も提示されたのだ。