7月3日で熱海土石流災害から1年です。土石流で家族を失った人たちにとっては“人災”と訴え続けた1年ともいえます。

母が眠るお墓を訪れた男性、瀬下雄史さん(54)です。2021年7月の熱海土石流災害で母・陽子さん(77)を亡くしました。

病を抱えた夫の看病にも前向きで、家族思いの明るい人だったといいます。

陽子さんは20年前に横浜から引っ越し、夫婦の終の棲家として、伊豆山地区を選びました。

<被害者の会 瀬下雄史会長>
「まさかそんな危険な盛り土がされ、進行しているとは露とも思ってなかったでしょうし、結果的にこういうゴミにまみれて殺されたわけなんでね、許せないですよね、本当に」

土石流の発生からまもなく1年が経ちます。

<瀬下雄史さん>
「大変な1年でしたよね、本当に。やっぱり悔しいという思いはもちろんありますし、こういう悲劇を二度と起こしてはいけないんだという使命感がありますから」

甚大な被害をもたらした土石流。災害発生からほどなくして、その起点には人工的に造られた盛り土があったことが指摘されました。規制を超える大量の土砂が放置されていたのです。

瀬下さんは、同じ被害にあった人たちに背中を押され、「被害者の会」を立ち上げます。

<被害者の会 瀬下雄史会長>
「彼らから謝罪の声を聞きたいということではありません。口先だけの謝罪ならそんなものは意味がない。ご自身がやられたことに責任をとっていただきたい」

瀬下さんは、盛り土の土地の所有者らを業務上過失致死などの容疑で刑事告訴。盛り土の危険性を認識しておきながら、必要な対策を怠ったと訴えました。

<和田啓記者>
「いま、捜査車両が盛り土を造成した前土地所有者の自宅に入ります」

瀬下さんたちの思いは捜査機関を動かし、静岡県警は土石流災害を刑事事件として捜査しています。

被害者の行動によって、国も動き始めました。

<被害者の会 瀬下雄史会長>
「法的拘束力のない指導などでお茶を濁してきた熱海市の対応には、当然大きな過失があると言わざるを得ません」

国会では、全国一律の盛り土規制法が成立。指定区域での造成を厳しい基準の許可制にして、罰則も最高3億円としました。

静岡県内でも7月1日から川勝知事が「全国一厳しいものにする」と語った新条例が施行されました。

瀬下さんを動かすのは、土石流災害は身勝手な業者によって積み上げられた盛り土が引き起こした“人災”という考えです。

土石流の起点となった盛り土を始めたのは、神奈川県小田原市の不動産会社。不安を抱く市民に招かれた講演会で、瀬下さんが語った言葉に熱海土石流災害の本質がみえます。

<被害者の会 瀬下雄史会長>
「一番は無能な行政、二番目におとなしい住民、これがセットになると悪徳業者は必ずはびこります」

行政と共に住民自身が声をあげる事が重要だと訴えました。

<被害者の会 瀬下雄史会長>
「団結です。数の力です。そして毅然とした対応です。最終的に声を上げ続けていくことを皆様が考えていただければ、小田原にも危険なリスクがあると存じています。未然に防げることになるのではないかと」

<記者>
「おはようございます」

<被害者の会 瀬下雄史会長>
「しっかり闘っていきたいと思います。再発防止のためにも適正な裁きが下るように」

盛り土崩落の責任を誰も認めないまま、遺族たちが盛り土の所有者らを相手取り損害賠償を求める裁判も始まりました。

母は、家族はなぜ、死ななければいけなかったのか?瀬下さんたち被害者の思いが1年で晴らされる事はなく、また、夏がやってきました。