サッカーの全国高等学校選手権大会、沖縄県予選決勝が11日に行われ、名護高校がPK戦の末に那覇西高校に勝利し、全国への切符を手にした。守護神として延長戦までゴールを守り続けた名護の主将でGKの松瀬真之介(3年)は、サドンデスに突入した6人目にキッカーに志願。ゴールを守る側からゴールを奪う側へ、その右足からは強烈なシュートが放たれた。
ノーシードVS超名門 試合は一方的な展開に
死闘―。名護と那覇西の決勝は、観客の応援がヒートアップする壮絶な試合になった。優勝経験がなく、部員のほとんどが地元出身。ノーシードから粘り強い守備で勝ち上がった名護に対し、今大会無失点の守備に加え、4試合で31得点と、攻守がかみ合い3年ぶり18度目の優勝を狙う名門・那覇西。小雨降る中での決勝戦となった。
序盤から試合の主導権を握ったのは那覇西。名護陣内に攻撃を次々と仕掛け、得点への期待が高まる中、前半25分にはPA手前の絶好の位置からのフリーキックも名護の守護神・松瀬がファインセーブ。
その後も試合の流れは変わらず、連携しながら猛攻をしかける那覇西に対して、必死のディフェンスで失点を防ぐ名護。応援団からはひときわ大きな歓声が上がり、那覇西が勢いを増すものの、名護がゴールを守り切りスコアレスのまま前半を折り返した。
(ハーフタイムの様子)
名護「0で帰ってきたのは大きい、ここからここから。最後まで行こうな!」
那覇西「応援をガンガン生かしていこうぜ!みんなで戦おう」
後半に入っても攻める那覇西に守る名護。試合最大の見せ場が訪れたのは後半のアディショナルタイム。
名護陣内に攻め入った那覇西は左サイドの玉寄の返しに7番宮城が合わせるも、クロスバーに嫌われ、あと一歩ネットを揺らすことができず、前後半の80分が終了。試合は延長戦に突入した。
準決勝も最終キッカーとして勝利に導いたGK
GK・松瀬を中心に那覇西の攻撃にギリギリ耐えてきた名護。運動力が落ちる延長戦ではカウンターからゴールまであと一歩のシーンがでるもネットを揺らすことはできず、勝負はPK戦に突入した。
名護は準決勝でもPK戦までもつれる接戦に。5人がシュートを放つも決着がつかずサドンデス方式に突入。7人目のキッカーに志願したのがGKの松瀬だった。ゴール右に叩き込み、決勝に進出していた。
決勝戦にふさわしい大激戦に大きく沸く観客の声援を背に、互いにシュートを放つ名護と那覇西。5人目までが終わり、スコアは3対3の同点でサドンデス方式に突入。このプレッシャーがかかる場面でキッカーに志願したのが、またGKの松瀬だった。
先行の那覇西が枠を大きく外し、決まれば悲願の優勝を手にすることができる名護。会場の視線が集まり、水を打ったような静けさの中、松瀬は静かにボールをセット。普段はゴールを狙うことはない、この男に運命は託された。
主審の笛が鳴り、6試合にわたりゴールを守り続けた男が放った強烈なシュートは、準決勝と同じような軌道をたどりゴール右に突き刺さった。
悲鳴にも似た歓声がこだまする会場。大きなガッツポーズを作り、チームメイトのもとに駆け出した松瀬。男たちは満面の笑みと涙を流した。
勝利のPKを決めた GK・松瀬真之介
「高校サッカーを通して一番最高で幸せな日になりました。名護から全国へというのが目標なのでそれを達成出来て良かった。沖縄県の全チームの分を背負って、全国大会に臨んでいきたい」
準決勝、決勝と自らの足で勝利を決めた、GK松瀬真之介。これまで届かなかった頂きを手にし、初の全国選手権の舞台に仲間とともに挑む。