富山県砺波市。庄川と小矢部川が織りなす扇状地「砺波平野」には、四季折々の表情をみせる国内最大スケールの散居村が広がっています。その伝統的な風土を支える庄川沿いの堤防に、江戸時代に植えられたアカマツの並木が続いています。そのアカマツがこれまでにない勢いで枯れていることがわかりました。2023年の異例の暑さが影響したとみられ、地元住民たちは歴史ある景観を守りたいと声をあげていますが、この並木を残すには思わぬ壁がありました。

砺波カイニョ倶楽部・柏樹直樹さん:
「この3本まとまって枯れているのが一番特徴ですけど、ことしの9月頃から色が変わってきて、もはや赤くなってしまったでしょう」


砺波市を流れる庄川の堤防に植えられたアカマツ。本来とは、かけ離れた色になっています。

樹さん:「情けないなと。寂しいですね」

2023年7月には青々としていたアカマツの並木に何があったのでしょうか。枯れてしまったのは、観光名所・庄川峡から5キロほどくだった「松川除(まつかわよけ)」と呼ばれる堤防沿いのアカマツです。この並木を50年以上見てきたというボランティア団体の柏樹直樹さんと但田富美男さんが、堤防およそ1キロにわたって植えられたアカマツ49本を調べた結果、2023年だけで10本が枯れたことがわかりました。

柏樹さん:
「こんないっぺんに枯れるとは。1本か2本枯れる時はあるけど、こんなことなかったです。ことしの夏の暑さで、やっとやっといたのがこうやって、ばあっと枯れたんじゃないかと思う」

松の油を戦闘機の燃料に使うため大量に伐採された
庄川沿いでは、江戸時代に洪水から砺波平野を守ろうと、45年の歳月をかけて堤防が作られました。それをしっかりと固めるために植えられたのが、このアカマツの並木です。この並木道は地域の生活道路としても親しまれ、戦時中には航空機の燃料を製造するため多くの松の木が伐採されましたが、残ったものは樹齢170年の歴史を持ちます。

並木道を散歩をしていた付近住民はー
「寂しいですね。ここは昔からの並木というか、庄川の河川敷のひとつの景色というかね。枯れていく状況を見る限りはちょっと異常ですね」


枯れたマツは、枝が落ちてきたり倒れてしまう危険があるため、柏樹さんたちは庄川を管理する国土交通省・富山河川国道事務所の大門出張所で枯れたアカマツを伐採し、新たに植えなおしてもらうよう申し入れました。

柏樹さん:
「今植わっているアカマツの補植を
 ぜひ考えてもらいたい」

富山河川国道事務所・大門出張所 
藤本真紀所長:
「樹木を植えるというのが実はなかなか
 難しいところがありまして」