新潟市東区在住の肥田野尚之さん(65歳)。
老舗ホテル『イタリア軒』最高料理顧問を務めています。
これまで、「これに勝る仕事はない」と料理の力を信じ、食べる人の笑顔のために経験を積み重ねてきました。

西洋料理の技を磨き続け、2020年に「現代の名工」にも選ばれた調理歴45年の肥田野さんは今年、長年業務に励んだ人に贈られる黄綬褒章を受賞します。

【イタリア軒 最高料理顧問 肥田野尚之さん】
「西洋料理一筋にやってきたことが評価されたのかな。非常にうれしいことです」

その技の一端を見せて頂きました。
柔らかさ、色合いなど細部に気を配り、フランス伝統の調理法「揚げ焼き」で「カツレツ」が完成。

【肥田野尚之さん】
「絶妙だね―」

イタリア軒伝統のデミグラスソースとともに、西洋料理の代表格です。
(※現在はメニューとしては提供していません)

【記者レポート】
「おいしい。均一なんですよね、丁度いい弾力で、衣、揚げ具体もサクッと口の中に浸透してくるような…」

多岐に渡る料理を提供してきた肥田野さんは、狩猟免許も持ち、ジビエ料理も得意としています。30代の頃には「イタリア軒以外の世界も知りたい」とフランスでの修行も経験しました。

そんな肥田野さんが「料理の力」を感じた出来事がありました。
東日本大震災です。

【イタリア軒 最高料理顧問 肥田野尚之さん】
「我々料理人なんだから、何か食を通じてできることはないのかな」

新潟市内で避難生活を送っていた人たちおよそ600人に、ボルシチスープを振舞う炊き出しを行いました。

【当時の肥田野さん】
「おいしいと言っていただいたのでうれしかったです」

【イタリア軒 最高料理顧問 肥田野尚之さん】
「その時に料理の力を感じましたね。食というのは人を勇気づけたり元気づけたり…。食べてくれる人が笑顔になる、それに勝る仕事はないのかな」

多くの人を笑顔にする年月を積み重ねてきました。

今は、自らの役目として後進の指導にも重きを置きながら、来年のイタリア軒150周年となる節目を迎えた後に「ある夢」を抱いています。

【肥田野尚之さん】
「実家の方に小さな厨房をつくって、今までやってきた料理を自分であったり家族であったり、気の知れた友人たちに振舞ったり、料理の勉強をしたりということをやっていきたいなと思います」

「自分の店を持つ」そして、「実力のある若手と切磋琢磨する」。
肥田野さんはこれからも料理の技を磨き続けます。