その年のプロ野球で最も活躍した完投型先発投手に贈られる「沢村賞」。厳正な基準をクリアしなければ該当者なしの年もあるこの最高の栄誉を3年連続で受賞したのが山本由伸(25、オリックス)だ。史上初の3年連続投手4冠(最多勝、最優秀防御率、最高勝率、最多奪三振)に加え、戦後初めて2年連続でノーヒットノーランも達成した日本球界現役No.1投手。その山本のフォームが今、話題になっている。
今季から左足を上げず、マウンドの土に擦らせるかのように短く踏み出すフォームで勝ち星を積み重ねた山本。そのフォームが、沢村賞にその名を残した「不滅の大投手」と言われる沢村栄治に似ているという。大投手の映像を実際に見たという山本は、受賞後のインタビューで「凄い投手がそういったフォームをしていたっていうのは、やっぱり凄く嬉しかったというか、良かったです」と多くは話さなかった。ただ研究熱心でも知られる右腕が実際に沢村のフォームを参考にした可能性はある。事実、投手最高の栄誉を3年連続で受賞したにもかかわらず「いいピッチングができた試合は、やっぱり去年よりもいいボールになってたと思います。でもまだまだ全試合その投球が出来るわけでもない。反省する点がたくさんあったので、また頑張りたいと本当にそういう気持ちですね」と全く満足していない。
常に先を見つめる山本は、現在戦っている日本シリーズ終了後のオフに、ポスティングでのメジャーリーグ挑戦がささやかれている。今季は海を渡り、多くのメジャー関係者が山本の視察に訪れた。数々の大型契約をまとめてきたヤンキースのキャッシュマンGMは、2年連続のノーヒットノーランを目の当たりにし「ファンタスティックだった!素晴らしいピッチングを見られて良かったよ!」と賛辞を惜しまなかった。果たして日本球界最高の投手はどこまで成長するのか。今後の行方を見守りたい。
■山本 由伸(やまもと・よしのぶ)
1998年8月17日生まれ。岡山県出身。都城高(宮崎)から16年ドラフト4位でオリックスに入団。右投右打。プロ通算70勝29敗。21年東京五輪で金メダル獲得。今年のWBC優勝にも貢献。
■沢村 栄治(さわむら・えいじ)
1917年2月17日~1944年12月2日。三重県出身。1934年の日米野球で、べーブ・ルースやルー・ゲーリックらメジャーリーグ選抜を手玉に取る投球でその名を轟かせる。右投左打。巨人の初代エースとして1936年の初優勝に貢献。ノーヒットノーランは史上最多タイの3回達成。巨人の背番号14は初の永久欠番。1959年に野球殿堂入り。














