エジプトの有名なピラミッド、ギザの三大ピラミッドを含む世界遺産が「メンフィスとその墓地遺跡」です。メンフィスは古代エジプト王国の都だった所で、その西側の砂漠地帯にピラミッドなど多くの墓地遺跡が点在しています。

ナイル川を見つめるように築かれたスフィンクス
クフ王、カフラー王、メンカウラー王の三大ピラミッドはギザ台地という高くなった場所に築かれているのですが、これには訳があります。古代エジプトの時代、ナイル川は氾濫して現在よりもずっと川幅が広く、ギザ台地のすぐ下まで水が来ていたのです。番組でドローンを使い上空から撮影したところ、小高くなったギザ台地の縁が当時の川岸だったことがよく分かりました。この当時の川岸にあるのが巨大なスフィンクス。その顔は川の方角を向き、ナイル川を見つめるように築かれていたのです。

スフィンクスの隣にあるのが河岸神殿(かがんしんでん)。文字通り、当時の川岸に建てられた神殿です。王が死去すると、その遺体を船でナイル川を使って運び、河岸神殿の前で下ろしました。そして内臓を取り出して洗い、河岸神殿の中でミイラにしたのです。

神殿からは参道が伸びていて、王のミイラはこの参道でピラミッドまで運ばれていきました。墓地を守護するスフィンクス、遺体をミイラ化する河岸神殿、神殿とピラミッドをつなぐ参道、そしてミイラを納める巨大ピラミッド・・・このように王の葬送にまつわる一連の施設がセットで築かれているので、それらを総称してピラミッド複合体(英語だとPyramid Complex)と呼びます。
仏教の三途の川と発想が似たネクロポリス
ちなみに「メンフィスとその墓地遺跡」は英語だと、「Memphis and its Necropolis」。ネクロポリスは大きな墓地・埋葬地を意味しますが、語源はギリシャ語の「死者の都」です。ナイル川を渡って「死者の都」へ・・・ちょっと仏教の三途の川と発想が似ています。
