26日に行われるプロ野球ドラフト会議で、4年越しの約束を叶えようとしている2人がいる。ドラフト1位候補に名前が挙げられる最速152キロ右腕・西舘昴汰(22、専修大学)と、大学侍ジャパンの捕手・進藤勇也(21、上武大学)だ。2人は福岡・筑陽学園でバッテリーを組み、2019年に春夏連続で甲子園の土を踏んだ。その後、別々の大学に進み、目指したのは4年後のプロ入り。その約束を果たす瞬間は、まもなく訪れる。
今年6月、神奈川県・平塚市で行われた大学日本代表合宿で再会すると、互いの成長に驚きを隠せなかった。進藤が「ストレートの質も良くなってるし、全てが成長していました」と西舘を絶賛すれば、西舘は「頼もしさを感じたし、改めてもう一度バッテリーを組みたいと感じました」と進藤の乾いたミットの音を懐かしんだ。
2人には4年前に交わした約束がある。
「高校の時からまた同じ舞台で野球が出来たらなという話はしていたので、もう一度一緒にやりたいですね」と進藤が話すと、西舘も「自分も同じ気持ちです」と笑顔で返した。
2019年、筑陽学園でバッテリーを組み甲子園に出場したが、プロのスカウトの評価は決して高くなかった。当時、西舘はチームのエース格ではあったが、直球の平均速度は130キロ台中盤。同学年の佐々木朗希(岩手・大船渡)、奥川恭伸(石川・星稜)らと比べると実力差は歴然だった。
最も衝撃を受けたのは、高校3年の春季九州大会準々決勝。沖縄・興南高校のエース左腕・宮城大弥(現オリックス)に対し、打席に立った時だった。余りにボールのキレが凄まじく、打席でボールが見えなかった。「今のままじゃプロ志望届を出しても、行けても育成指名だろうなと言われていたので、大学に進学して1位、2位で行ける選手になろうと思った」。
西舘は、2部でもハイレベルと言われる東都大学リーグで1年秋から公式戦デビュー。ストレートの最速は152キロまで伸びた。身長188cmの長身から二段モーション気味で繰り出されるストレートはスピードガン以上の圧力。即戦力でありながら、更なる伸びしろを感じる投手としてドラフト上位候補に各球団がリストアップされるまでに成長。4年間でWBC世界一メンバーとなった宮城大弥と同じ世界に飛び込む準備は整った。
一方の進藤は、高校時代から強肩が注目されたが、打順はチームでも下位。課題の打撃を磨くため、プロ志望届は提出せず群馬の上武大学の門を叩いた。趣味は筋トレ。高校時代81キロだった体重は現在90キロまで増え、リーグ戦の通算打率は3割を超え、通算8本塁打を記録。特筆すべき強肩は、二塁送球1.8秒台という1軍レベルの数値を叩き出す。今年のドラフト候補では、NO.1捕手の評価を受けている。
2人ともドラフト上位候補として名前が挙がるなか、西舘が「同じ球団に行けたら良いなとは思っているんですけど、順位は俺の方が上で行きたいな」と話せば、進藤も「一緒にやるのであれば自分が上で行きたいです」とライバル心を燃やす。
親友であり、ライバル。4年越しの約束を果たす2人に野球の神様はどんなストーリーを用意しているのだろうか。
■西舘 昴汰(にしだて・こうた)
2001年6月9日生まれ。福岡県出身。188cm92kg。右投右打、投手。
筑陽学園ではエースとして甲子園出場(春1回、夏1回)。専修大学では3年秋に東都2部で2完封を記録してMVPを受賞。4年秋には最速152キロを記録。
■進藤 勇也(しんとう・ゆうや)
2002年3月10日生まれ。福岡県出身。182cm90kg。右投右打、捕手。
筑陽学園では捕手として甲子園出場(春1回、夏1回)。上武大学では1年秋からリーグ戦に出場。大学4年では大学侍ジャパンに選出、日米大学野球では全5試合でスタメンマスク。