女子駅伝日本一を決めるクイーンズ駅伝(11月26日・宮城県開催)の予選会であるプリンセス駅伝が10月22日、福岡県宗像市を発着点とする6区間42.195kmのコースに31チームが参加して行われる。三井住友海上は外国人選手と大物新人の小林成美(23)を起用しないが、樺沢和佳奈(24)と西山未奈美(23)のスピードランナー2人が好調。ニトリは今季5000m15分台の自己新を出した選手が多く、外国人選手も強い。他の上位候補チームにとって不気味な存在になった。
1区か3区の樺沢でリードしたい三井住友海上
三井住友海上は「樺沢、西山、片貝(洋美、32)が主要区間候補」と鈴木尚人監督。特に樺沢の走りが流れを左右する。
樺沢は7月に5000mで15分19秒98の自己新、今季日本3位の好記録をマーク。3月には10kmロードで32分05秒で走り、同じレースを走った前回5区区間賞の逸木和香菜(29、九電工)を25秒引き離した。そして9月の全日本実業団陸上は初日の1500mで4分11秒53と、自己記録を5秒近くも更新。日本人1位の木村友香(28、積水化学)に0.02秒まで迫った。そして3日目の5000mは暑さのため記録は15分33秒69にとどまったが、日本人2位を3秒62差で日本人トップに。プリンセス駅伝で直接対決する可能性のある下田平渚(23、センコー)や林田美咲(23、九電工)には、20秒弱の差をつけた。
樺沢は今季、他チームから移籍してきた選手。鈴木監督は「5000mで代表を取らせることを念頭に置いている」と言う。全日本実業団陸上の1500mに向けて、そこまでスピード系のメニューは行っていなかった。
「持っているスピードを生かしながら、5000mでも持久的な能力を伸ばさないといけない。スピード持久力が落ちないトレーニングに取り組みました」(鈴木監督)。具体的な起用区間は最終決定されていないが、樺沢が1区か3区に起用されるだろう。そこでトップに立つ展開が可能になる。
西山は3000m障害で全日本実業団陸上に優勝しただけでなく、1500mでも4分14秒85の自己新。今季日本5位のスピードを身につけた。昨年の記録だが5000mでも15分33秒81と、区間賞争いが可能なタイムを持っている。
片貝は32歳のベテラン。5000mのシーズンベストは15分52秒21だが、21年の15分40秒08を筆頭に19年以降、毎年のように15分40~50秒台で走っている。10000mでは21年に、ハーフマラソンでは22年に自己新をマーク。日本トップレベルとまでは言えないが、クイーンズ駅伝では前半の1、2、3区も、後半の6区も経験している。
3人以外でも5000mが15分35秒13の松田杏奈(29)、15分46秒50の清水萌(22)、15分41秒88の小松優衣らが好調だという。主要区間候補以外の選手の5000mのタイムは、参加チーム中トップクラスだ。
樺沢でトップに立てば、そのまま押し切るチーム力がある。
今季好調の3人で上位の流れに乗りたいニトリ
クイーンズ駅伝出場は21年大会一度だけだが、ニトリが上位通過候補と言われるまでになった。トラックでは前回のプリンセス駅伝1~3区選手に自己新が相次いだ。
豊川高から入社4年目の古川璃音(22)が5000mで15分41秒41、中京大から入社4年目の杉浦穂乃加(25)が15分50秒89をマーク。福島明成高から入社6年目の鈴木葵(23)は5000mで15分58秒98と自己記録に肉薄し、1500mでは4分18秒58と自己新で走った。平田和光監督は「以前からの積み重ねがやっと花開いた」と言う。
平田監督自身は4月に就任した。
「選手目線でコミュニケーションをとり、練習でも個別性が高くなったと思います。個々の能力に合わせるので故障や体調不良もなくなりました」
昨年のプリンセス駅伝は1区・古川が区間15位、2区・鈴木が区間6位、3区・杉浦が区間23位で、3区終了時点の順位は17位だった。トップ争いまでは難しいかもしれないが、今年は上位の流れに乗ることができるかもしれない。
そしてニトリのアドバンテージは、インターナショナル区間の4区にエスタ・ムソニ(21)がいること。9月の全日本実業団陸上5000mでは14分58秒03と自己記録を大幅に更新し、強豪外国人選手が多数出場したなか2位と健闘した。昨年のプリンセス駅伝は区間8位(4人抜き)にとどまったが、今年はタスキをもらう位置次第ではトップに出る可能性もある。
「各選手の目標タイムから、2時間20分台をチームの目標にしています」
今年はMGC特別措置で、MGC出場チームは完走すればクイーンズ駅伝に出場できる。フィニッシュタイムがどんなレベルになるか予想がつかないが、「10位前後はとりたい」と平田監督。
10位どころか、今年のニトリは台風の目となる可能性もある。
(TEXT by 寺田辰朗 /フリーライター)
※写真は左から三井住友海上の樺沢選手、ニトリのエスタ・ムソニ選手