ガザに戻れない 子どもの悲痛な訴え
小川彩佳キャスター:
戦火にあってもガザは大切な故郷で、その故郷が無残にも破壊されようとしている。子どもたちの悲痛な訴えを聞くと、やりきれない思いがしますね。

須賀川拓記者:
ここに取材に入るときドバイ経由で飛行機に乗ってきたんですけれども、偶然3人と東京からの便が同じだったんです。広島で会ったときの「私たちはこのメッセージを伝えるんだ」っていう表情と、飛行機に乗るときの表情があまりにも違って、子どもたちは現実を受け止めているところが心に響きました。
さらにファディくん(13)は、家族は無事でしたが、今回の戦争で友だち2人を失っているんですね。一緒にいるUNRWA職員の人たちの前で泣き崩れてしまったと言っています。

ガザにいる人たちも、外にいてがガザに帰ることができない子どもたちも本当に地獄のような体験をしている。これはしっかりと伝えていかなくちゃいけないですし、彼らの思いをどうやって人道支援とかに繋げていくか、各国の首脳もこれから大きな仕事が残されていると感じます。
小川キャスター:
広島を訪問中、目を輝かせる子どもたちの姿がありましたけれども、3人のうち2人は初めてガザを出たそうですね。
朝日新聞ウェブサイト「telling.」柏木友紀編集長:
ガザの住民の年齢構成をみると、WHOの調べても半数近くが18歳以下です。こういう子たちが一度もガザを出ないで、まだ若いのに銃を取って戦わなければならなかったり、空爆の音に常に怯えている状況は考えるだけでやりきれない。現代とは思えないですね。

小川キャスター:
こうした状況にある子どもたちが、今度は憎しみを募らせて負の連鎖に繋がっていく可能性もあるわけですよね。
パトリック・ハーランさん:
地上侵攻を考えているイスラエルを考えるときに思い出すのは、アメリカの国務長官コリン・パウエルが打ち出した「パウエル・ドクトリン」です。
その中に軍事行動を起こす前に8つの質問があって、全ての条件を満たさないとやってはいけないという基本原則なんですけど、その中で▼国家的な重大な利益、これはイスラエルにとってあるかもしれない。あと▼国民の支持、これもあるかもしれません。
それ以外に、▼達成可能なはっきりとした目的が見えているのか、▼出口作戦があるのか、▼国際社会の支持があるのかという、こういうところは全部「NO」なんですよ。ですから、少なくともパウエル・ドクトリンの上ではやってはいけない軍事行動にあたります。

出口作戦がはっきり見えてハマス掃討ができたとしても、その後、安定した政権・組織を作れるか、長期的な目的が達成できるかどうかを考えた上での軍事作戦じゃなければ、さらに辛い生活を余儀なくされて、妬み、苦しみ、恨みの負のサイクルになって、イスラエルにとってもっと危険な状態になるんじゃないかなと思います。
小川キャスター:
ジェナーンさんから全世界へのメッセージとして、「あなたたちを私は許さない」とありましたけれども、日本としてはどういった向き合い方が必要なんでしょう。
朝日新聞ウェブサイト「telling.」柏木友紀編集長:
日本はG7の中でも2023年は議長国を務めていますし、広島に全世界の指導者が集まって2度と市民の犠牲の大きい惨禍は起こしたくないと平和の尊さをかみしめたはずですよね。
日本はアラブ諸国ともイスラエルとも思う同じような距離感で外交をしてきました。バランス外交と言われていますけれども、だからこそ何かできることはないのかなと。
1993年にノルウェーが仲立ちしてオスロ合意(パレスチナとイスラエルの和平に関する合意)が成立したというパレスチナ問題の歴史があるわけですけれども、日本も仲介役とまではいかなくても、何か一歩踏み出してできることはないのか考えたいなと思っています。
