苗字は大谷。背番号は17。今月26日に迫ったプロ野球ドラフト会議の指名候補選手に、エンゼルスの大谷翔平を彷彿とさせるピッチャーがいる。独立リーグ、富山の大谷輝龍(23、富山GRNサンダーバーズ)だ。「名前負けしないように頑張っています。相手打者にストレートを狙われてもストレートで抑えるくらいストレートには自信があります」。
名前だけじゃない。その自慢のストレートは、今年のドラフト候補で最速となる159キロ。今季の独立リーグでは大谷が登板するたびにプロのスカウトが集結していた。
それでも去年までの4年間、大谷は社会人チームを渡り歩く全く無名の存在だった。「戦力外って会社から言われて、会社に一般社員として残ることもできましたが、移籍して野球を続ける選択肢もありましたし、やっぱりプロになりたい思いは強かったので、野球続けますって言って移籍先を探しました」。

まさに戦力外からの下克上。独立リーグで大変身を遂げたきっかけとなったのが、西村憲投手コーチとの出会いだ。阪神の中継ぎ投手(09〜14年)としてプロで活躍した西村コーチのアドバイスは「キャッチボールが一番大事」。投球フォームどうこうより意識の部分を話し合い、野球の基本キャッチボールを徹底的に見直した。毎日課題をノートに書き留め復習する事で、変化球を含めたコントロールもどんどん良くなっていった。「西村コーチがいなかったら、今の僕はいないと思いますし、ここまでの成長も絶対できていない。気持ちの面も技術面も、本当にいろいろ助かったなと思います」。
よりプロへの意識が高まった大谷は「これを風呂あがりにやっています」と驚きの柔軟性を披露。けがの予防はもちろん、球速は今年だけで最速152キロから159キロにまで伸びた。同じ背番号17を背負うメジャーリーガー大谷翔平(29、エンゼルス)も、もちろん手本にしている。

「技術面・プレー面はもちろんそうなんですけど、やっぱり人間性は本当素晴らしいと思っていて、誰が見ても、本当に真っすぐな人だと思いますし、野球に前向きで、そういうところは見習いたいと思います」
果たして26日のドラフト会議"北陸の大谷”の名は呼ばれるのか。
「野球好きな人は誰もが憧れる場所だと思いますし、僕も小学校からずっとやりたいと思っていた舞台でもあるので、本当にそういう舞台が近くなればなるほど、行きたいっていう気持ちもどんどん強くなりましたし、みんなの目標となる選手になれたらと思っています」。
■大谷 輝龍(おおたに・ひかる)
2000年7月11日生まれ。石川県出身。小松大谷高校時代はエース(甲子園経験なし)。社会人野球の4年間(JFE東日本・伏木海陸運送)ほぼ実績なし。今季から独立リーグ・富山GRNサンダーバーズで活躍。