10月15日にMGC(マラソン・グランドチャンピオンシップ)が東京・国立競技場を発着点とする42.195kmのコースで開催される。MGCは東京五輪前の19年に始まった、上位2選手が翌年の五輪代表に決定する選考レース。以前のような複数の選考会から代表が選ばれるのでなく、一発勝負的な要素が強い。4年前がそうだったように、火花が散るような激しいレースが期待できる。
そのMGCに出場する男子有力選手の特徴を紹介していく。5人目は昨年の世界陸上オレゴン13位の西山雄介(28、トヨタ自動車)。前回19年のMGCで東京五輪代表を決めた“先輩”2人の走りを見て、自身の競技への取り組みを変えられた。4年後の今回はどんな運命が待っているのだろうか。
【西山雄介プロフィールと成績】
1994年11月7日生まれ
三雲中(三重)→伊賀白鳳高(三重)→駒澤大
▼マラソン全成績(カッコ内は日本人順位)
2022/2/6 別大1位(1位) 2時間07分47秒
2022/7/17 世界陸上13位(1位)2時間08分35秒
前回のMGCを見て競技に取り組む姿勢を変えた
西山雄介は何の躊躇(ためら)いもなく話した。「4年前のMGCが自分の競技人生を変えてくれました」
前回MGCで東京五輪代表を決めた2人は、ともに西山の“先輩”だった。優勝した中村匠吾(31、富士通)は伊賀白鳳高と駒澤大を通じて2学年先輩。2位の服部勇馬(29、トヨタ自動車)はトヨタ自動車の1年先輩だった。
19年の西山は入社2年目。高校時代は国体5000m2位(日本人トップ)、全国高校駅伝1区区間賞と世代トップの選手だった。だが駒澤大では出雲駅伝の区間賞はあるものの、箱根駅伝では目立った成績を残せなかった。入社後2シーズンまでも、ニューイヤー駅伝に出られていない。西山は自分を変える必要性を感じていた。
「身近にいる人が高いレベルでやっているのに、自分はなんて低いんだろう、と思いました。周りの高いレベルの人から学んだり、聞いたりして試行錯誤しました。練習前の準備、練習後のケアを入念に行うこと。それで質の高い練習を継続して行うことができるようになりました」
入社3年目はニューイヤー駅伝に初出場。スピードが要求される3区(13.6km)でいきなり区間賞を獲得した。しかし初マラソンを走ったのは入社5年目である。
3年目の3区区間賞という結果でさらに高いレベルを求めるようになり、4年目に10000mで自身初の27分台をマークし、それからまた1年後の5年目に初マラソンと着実にステップを上げていったからだ。それだけ丁寧に準備をして、出したい結果をきっちり出し続けた。
別大では初マラソン日本最高(2時間07分42秒)を出すつもりで走ったが、優勝したものの2時間07分47秒だった。5秒届かず悔しがったが、その年7月の世界陸上オレゴン大会の派遣設定記録(2時間07分53秒)を突破し、世界陸上代表の座を得ることに成功した。