自然環境を守るなかで課題となるごみ問題。環境省によりますと、一人当たりの1日のごみ排出量の全国平均は918グラムとなっています。沖縄県内の平均は889グラムと全国平均とくらべるとわずかに少ないのですが、生ごみのほか、リサイクルが可能なごみを焼却処理している割合が高いことが特徴です。
この生ごみを資源として活用する有機栽培を20年以上前から取り組む農家があります。

「大きな収入にはならないけど」 理念や信念で取り組み循環型農業

那覇市のスーパーに並ぶ有機野菜。一般的な野菜と比べると決して安くはないものの、それを選んで手に取る人の姿もあり、堅実な需要があります。

買い物客
「有機野菜の方を選んでます。ちょっとお高いですけど 何回かに分ければ高くない」

この有機野菜を生産しているのは、沖縄県八重瀬町に拠点を置く『農業生産法人あらぐさ』です。会長の前田さんは、あるこだわりの方法で野菜を育てていると言います。

あらぐさ 前田順光会長
「循環型農業 まーいまーい(回る、回る)ってね」

『循環型農業』とは、生ごみなどを肥料に変えて農作物などを生産すること。ニワトリや豚といった家畜の排せつ物が使われることも多いのですが、あらぐさで使われるのは生ごみのみで、その回収元に特徴があります。

それは有機野菜を販売するスーパーから出る、野菜の切れ端などを活用していること。

あらぐさは農業生産法人としては県内で唯一、自社の肥料工場を持っており、そこでオリジナルの肥料を作っています。

この肥料工場では、スーパーやショッピングセンターなどから出る生ごみを回収し、およそ1週間かけて肥料へと変えていきます。

あらぐさが回収する生ごみの量は、実に年間2555トン。更に肥料作りにこだわりが…

あらぐさ 仲地司肥料工場長
「サトウキビから作られたのが糖蜜といって、放線菌などの発酵を促進します」

サトウキビからできる糖蜜を加えることで、微生物の活動が活発となり、栄養豊富な有機肥料ができあがると言います。

こうして作られた肥料は、自社の農場で使われるだけでなく農家にも販売されます。『生ごみを肥料に変え、新たな作物づくりに生かす』。20年以上も前から続くあらぐさのこの取り組みは、SDGsの目標にもつながっています。

あらぐさ 前田順光会長
「みなさんの口に入れるものを安心安全な形でつくったらどうだろう、農薬化学肥料を使わない、土壌の汚染と大気の汚染を軽減して環境の負荷をとる、普通の農業よりは大きな収入は得られないけどやってることの理念や信念が支えで楽しい」

スーパーなどで普段何気なく手にする野菜。その栽培方法にも目を向けてみてはいかがでしょうか。