大会2日目の男子400mは佐藤拳太郎(28、富士通)と佐藤風雅(27、ミズノ)のダブル佐藤に順位も記録も期待できる。9月29日から10月5日に行われるアジア大会(中国・杭州)陸上競技。7月のアジア選手権(タイ・バンコク)では佐藤拳が優勝し、佐藤風が2位。金銀メダルを独占した。佐藤拳は8月の世界陸上ブダペストの予選で44秒77と、高野進が持っていた44秒78の日本記録を32年ぶりに更新。佐藤風も準決勝で44秒88と日本歴代3位をマークした。ダブル佐藤を含めた国内の競り合いがレベルを上げ、1986年ソウル大会の高野以来、37年ぶりアジア大会金メダルが期待できるまでになっている。

佐藤拳は金メダルと日本記録が目標

佐藤拳はアジア大会陸上競技の男子主将でもある。7月のアジア選手権で優勝しているだけに「もう1つアジアタイトルを取る」と、いつものように冷静に話す。

「世界トップ選手たちは国内選手権に勝って、(アジアなど)エリアでも勝って、その上で世界陸上やオリンピックに臨んでいます。私もアジア大会のタイトルを取り、来年のパリ五輪につなげたい。つなげなくてはいけません」

佐藤風が44秒77の日本記録更新に意欲を持っていることを聞かされると、「私も44秒77が最高だとは、少しも思っていない」と答えた。

「44秒台を日本のスタンダードにしていかなければいけません。44秒台で競り合った先に(世界大会でメダル獲得が可能な)43秒台がありますし、マイル(4×400mリレー)のメダルもあります」

佐藤拳にとって金メダルと日本記録の更新は、是非ともやりとげたいアジア大会の目標になっている。

男子400mは1980年代から90年代前半、高野進が世界的に活躍した。88年ソウル五輪で日本人初の44秒台(44秒90)をマークし、91年に44秒78の日本新と世界陸上決勝進出を成し遂げた。翌92年バルセロナ五輪でも、前年の世界陸上7位に続き8位に入賞した。

その高野が86年ソウル・アジア大会で出したタイムが45秒00だった。佐藤拳は7月のアジア選手権で、奇しくも同じ45秒00を出していた。アジア大会でも“高野超え”を達成したい。

佐藤風が全日本実業団陸上でスピードに手応え

アジア大会1週間前の全日本実業団陸上(9月24日・岐阜)の200mに、ダブル佐藤は出場。佐藤風は予選1組に出場し、スタート直後にバランスを崩したが20秒83(+0.2)で1位。決勝は棄権した。佐藤拳は予選3組を20秒78(-1.6)の1位で通過すると、決勝も20秒70(-1.0)で制した。

佐藤風は全日本実業団陸上出場の目的を以下のように話した。
「自己ベスト(20秒72)を更新してスピードを確認し、44秒77をしっかり更新するイメージを作りたかったんです。まあ転んだ(バランスを崩した)のにシーズンベストは出ました。400mならもっと抑えてスタートするので、同じミスはしません。200mのスピード自体は悪くないので、(アジア大会は)流れを400mに近づけていけば、世界陸上くらいの調子ではしっかり入れる」

佐藤風はブダペストから帰国後、「1週間しっかりと休んだ」という。そこからアジア大会に向けて状態を上げていく過程で、全日本実業団陸上の200mに出場したのだ。

「世界陸上の感覚は残っているのですが、体が付いてきませんでした。違和感を持ちながら練習してきましたが、今日は噛み合ってきた感覚がありました」 佐藤風が重視しているのは前半200mの走り。ブダペストの準決勝で、44秒88を出したときは21秒09だった。そのタイムでも現時点では喜ぶことができた。それが21秒を切るスピードで200mを通過できれば、「前半を今よりも置いて行かれずに走ることができます。僕が44秒5を切るにはそこが重要になる」と感じている。

杭州では前半の200mを、世界陸上以上のスピードで飛ばす佐藤風の姿が見られるかもしれない。