「波打って襲ってくる」直径60センチの丸太
ほとんどが身元もわからないまま。火葬場まで運ぶのも長澤さんの役目でした。
(長澤春男さん・98歳)
「(遺体を)トラックに乗せて八事まで運ばないと行けない。(Q.ここから八事霊園まで?)そうそう。本当に大変だった」

明治以降最大の気象災害と言われる「伊勢湾台風」。被害を拡大させたのは名古屋港周辺の貯木場にあった大量の“ラワン材の原木”です。これらが高潮で押し流され、凶器となって町を襲いました。

国道247号沿いにある南消防署大同出張所。長澤さんは、この場所で驚きの光景を目にしたといいます。
(長澤春男さん・98歳)
「(直径5、60センチの丸太が)波打ってくるんだよ。それが塀にぶつかって、波にやられて(丸太が)立つんだもん。びっくりした、なんやこれはと」
材木は縦に回転しながら人や家に襲いかかりました。

台風が去り、10日ほどでようやく水が引いた南区の浜田学区。残されたのは犠牲者の沢山の長靴です。靴は一カ所に集められ、多くの人が手を合わせるようになったこの場所は、いつしか「くつ塚」と呼ばれるように。
64年の歳月が流れても、あの痛ましい記憶はここへ来るとよみがえってきます。
(長澤春男さん・98歳)
「思い出しちゃうから。死体を運ぶ時に、ごめんな乱暴なことをして。ごめんな…ごめんなさい」

