今オフにフリーエージェント(FA)となる大谷翔平(29、エンゼルス)の今後はどうなるのか。2回目の右ひじ手術が成功した大谷だが、投手として登板出来るのは25年シーズンからの見込み。それでも各球団による激しい争奪戦が予想される中、最高額で大谷獲得に乗り出すと報道されているのがニューヨーク・メッツ。日本人選手も多く在籍してきたメッツの番記者を20年以上続けるデイビット・レノン氏(コラムニスト)に大谷移籍の現状を聞いた。

Q.メッツはどんなチーム
2023年のメッツを一言で表すと「期待はずれ」という言葉になります。
3億7700万ドル(約558億円)という高額な給料を支払い、素晴らしい選手を獲得したにも関わらず、ワールドシリーズに進むことは叶いませんでした。メッツのオーナーであるスティーブ・コーエンは、将来殿堂入りするであろう2人の選手、シャーザーとバーランダーをトレード期限までに放出し、売り手のポジションに立ちました。2024年には若手の補強を示唆しており、今年はピーター・アロンソやフランシスコ・リンドーアなどが攻撃面で期待されましたが結果は出ず、オフには補強が必要だと思われます。

Q.大富豪オーナーのスティーブ・コーエンとは
スティーブ・コーエンの資産は180億ドル(約2兆6000万円)と言われており、メジャーリーグで最も裕福なオーナーです。グループオーナーとしては他にもいるのですが、個人としては一番裕福なオーナーとなります。彼はヘッジファンドなどで成功し、お金の不足は考えられません。メッツの今年の給料総額は他球団をかなり引き離して球界1位となっています。2位はヤンキースで、確か2億9400万ドル(約435億円)でしたが、その差はほぼ1億ドルです。ですので金銭面の問題はありませんが、彼がどうお金を使うかは別の問題です。ただし、この金銭面でのアドバンテージはメッツがフリーエージェント獲得にかなりのメリットとなるのは間違いありません。

Q.メッツは最高額を提示するか
それは違うかもしれません。どちらの方向にチームが進むかによって変わると思います。2024年は先発投手の補強が先決だと思います。シャーザーとバーランダーを出してしまい千賀とホセ・キンタナがいるだけ。大谷が来年投げられなくなった事はメッツにとって大きな問題です。25年に投げられても、今年のような活躍ができるかは分かりません。
今のメッツにとって彼の価値には疑問が残りますが、大谷は他の部分でも価値があります。攻撃面ではアーロン・ジャッジのようなDH(指名打者)の価値がありますし、グローバルに認知されていてマーケットバリューもある。エンゼルスがそうだったように広告費や放映権の収入も見込めます。メッツが最高額を提示出来るチームか?もちろんです。メッツが最高額を提示することを選ぶか?それは別問題です。5億ドル(約740億円)と言われていますがスティーブ・コーエンがどれくらい大谷を欲しいか。もちろん興味は持っています。オファーもするでしょう。ただメッツが今ほんとうに必要な選手か。そこに疑問が残ります。他の球団の方が高い金額を出す可能性はあると思います。

Q.打者としての大谷にメッツは
メッツは先発投手が必要だと言いましたがDHも必要です。DHで活躍できる選手を見つけることが出来ていません。ここ2年間、左のダニエル・ボーゲルバックを試してきましたが、結果が伴っていません。ですので大谷はDHとして非常に適していると思います。ただし、スティーブ・コーエンは昨年と比較して、今オフは支出を控える方針を示唆しています。昨年は5億ドル(約740億円)をフリーエージェントに費やしました。
もう一つ考慮すべき点は贅沢税です。現在メッツは1ドル使うごとに2ドル支払わなければならない状況です。もし大谷に年俸5000万ドル(約74億円)を支払うとなると、それだけで1億ドル(約148億円)の支出になります。大谷はけがの歴史もあります。右ひじの手術は今回が2回目となり、その点も考慮すべきです。スティーブ・コーエンはここ数年、衝動的にチームを組み立てようとした傾向があります。金額に関係なく、シャーザーとバーランダーを獲得しにいきました。大谷にも同じようにアプローチするのか?結果を出せずファンは非常に失望しています。チームの士気も低下しています。大谷を獲得すればファンは大いに喜ぶでしょうが、そのためにどれだけのコストをかけるのか疑問です。