金融庁が異例の立ち入り検査を“事前公表”
小川彩佳キャスター:
9月19日に行われた金融庁の立ち入り検査は、異例の対応というふうに言われていますけれども、どの点が異例だったんでしょうか。

TBS経済部 金融庁担当 出野陽佳 記者:
金融庁が19日に行った立ち入り検査の日程を事前に公表していた点です。実はこれまで立ち入りを事前に公表したことはありませんでした。
ビッグモーターをめぐる一連の問題というのは社会的な関心が極めて高いためで、両者に対し、厳しく臨む姿勢を強調する狙いもあります。
検査官が会社に常駐する形で今後数か月かけて実態を調べていくことになります。
小川キャスター:
じっくりということになりますけれども、ただ事前に公表してしまうと証拠などを隠す余地を与えられてしまうのではないかというふうに思ってしまいました。

〈立ち入り検査のスケジュール〉
・9月4日 立ち入り検査を通告 →捜査開始
・9月12日 日程を公表
・9月19日 立ち入り検査
TBS経済部 金融庁担当 出野陽佳 記者:
実は、金融庁は9月4日に立ち入り検査の実施を通告していて、この時点から検査そのものは始まり、資料などは隠せなくなっているんです。
隠したり、嘘をついたりなどすれば、処分がより重くなる可能性もあるため、きちんと日程を公表した状態で立ち入りとなった形です。
小川キャスター:
よく「半沢直樹」などのドラマで必死に隠したりしてるシーンなどありますけど、あのようなことはないわけですね。
金融庁が立ち入って何を確認したいのかというところですけれども、ポイントは3つあるということです。

〈金融庁 立ち入り検査のポイント〉
・損保ジャパンが“査定の省略”導入の背景
・損保ジャパン 取引再開の経緯
・損保ジャパンからビッグモーターへ出向者の役割
TBS経済部 金融庁担当 出野陽佳 記者:
まず「損保ジャパンが査定を省略した仕組みを導入した背景」についてです。
一般的には査定を簡略化することで、より迅速に保険金が払われるようになるので、契約者にとってはメリットのある仕組みです。

しかし、今回導入した査定を省略する仕組みで、ビッグモーター主導による修理が可能になったことが、その後の不正請求の温床になった可能性があると金融庁はみています。
これは契約者のためではなく、損保ジャパン・ビッグモーターの双方の利益に繋がるもたれ合いの構造によるものだったのかがポイントです。
小川キャスター:
そして2つ目のポイント「損保ジャパン 取引再開の経緯」です。

TBS経済部 金融庁担当 出野陽佳 記者:
ビッグモーターの不正の可能性を把握しながら、大手損保の中で唯一、取引を再開していたわけですが、9月8日に辞任を発表した損保ジャパンの白川社長は「(ビッグモーターとの)取り引きが大きく減る可能性がある危惧を私がしていた」と説明し、自らの経営判断ミスを陳謝していました。
しかし、金融庁の中からは「白川社長が辞めて済む話ではない」という声もあり、親会社の「SOMPOホールディングス」の経営判断や監督責任についても詳しく調べる方針です。
そして3つ目の「損保ジャパンからビッグモーターへ出向者の役割」なんですが、他の損保会社と比べて、43人と突出して多かった損保ジャパンからの出向者が不正に関与していたのか、そして不正をどこまで知っていたのか、この点についても調査をする考えです。
ビッグモーターの“シェア6割”だった損保ジャパン

慶應義塾大学 宮田裕章 教授:
一つ明らかにしておきたいことなんですけども、通常、事業規模としては損保ジャパンの方が大きいですよね。ビッグモーターとの関係というのが、ここでは、いわゆる白川社長が気を遣ってるように見えるなど、力関係が逆転しているように見えるんですが、この背景には何があるんでしょう。
TBS経済部 金融庁担当 出野陽佳 記者:
ビッグモーターにおける損保ジャパンのシェアは6割に上り、保険料収入は年間120億円に上っていました。
この売り上げを他社に奪われるのではないかという危機感から、まさにビッグモーターに気を遣う関係になっていたと説明しています。
金融庁は立ち入り検査の内容次第では、業務改善命令など厳しい処分を下す方針です。