福島第一原発の処理水海洋放出が始まり、中国は日本からの水産物の輸入を全面禁止し、香港も宮城などの水産物を禁輸にしました。宮城県内の水産加工会社でも、香港へのホタテの出荷が見送られるなど影響が出ていて「もうアウトだ」と諦めの声が聞かれました。

石巻市寄磯浜でワカメやホタテなどを生産、加工販売している遠藤仁志さんです。処理水の海洋放出により中国が日本の水産物の輸入を全面禁止したことに驚いたといいます。

マルキ遠藤商店 遠藤仁志さん:
「中国で全面ストップという話があったので、もうアウトだな。香港サイドのほうからは処理水を流したら(輸入)ストップという話はなかったんです」

中国に加え、香港も宮城や福島など10都県からの水産物の輸入を禁止に。毎年8月頃から香港へホタテを輸出していた遠藤さんのもとにも、23日になって取り引きの停止を求める連絡が入りました。そのやりとりです。

今月22日、あわせて50ケースの出荷依頼がありましたが、その翌日には出荷をストップするよう求める連絡が…。

マルキ遠藤商店 遠藤仁志さん:
「運送屋さんにはすぐに電話したんです。こういうわけでストップになったんで申し訳ないと。いろいろな人に迷惑をかけてしまう。あーって一瞬ね。頭抱えちゃって」

さらに、取り引きがある静岡県の一部のスーパーが三陸ワカメなど東北の水産物の仕入れを当分停止する方針を決定したといい、国内でも風評被害は広がっているということです。

マルキ遠藤商店 遠藤仁志さん:
「海外ならわかりますけど、なんで日本国民がそこまでシビアになるのかってなっちゃいますよね」

遠藤さんは、このままでは生産者が立ち行かなくなり、販路も失われて県内の水産業は衰退すると危惧します。

マルキ遠藤商店 遠藤仁志さん:
「気力がなくなるまず、担い手も育たない、漁業の衰退がはじまる。そうならないよう本当に国には頑張ってほしい」

処理水の海洋放出に伴う政府、東京電力の風評被害対策について確認します。

政府は「風評被害対策」として300億円「漁業の継続支援」として500億円の合わせて800億円の基金を設けています。

このうち「風評被害対策」の基金は・水産物の販路拡大のための費用、・水産物の買取りや冷凍保管などに必要な費用などに充てます。

また、「漁業の継続支援」では・新たな魚種や漁場開拓に必要な漁具などの経費・漁船の燃料コスト削減に対する費用を支援します。

一方、東京電力は水産物の価格などのデータをもとに被害の有無を確認。売り上げ減少分を損害額として算定し賠償するとしています。

基金は設けられましたが、被害の認定や補償の範囲をどうするのか、課題は山積しています。