夏の甲子園は、神奈川・慶応高校の107年ぶりの優勝で幕を閉じました。そして、甲子園で優勝の瞬間を目の当たりにしたのが慶応高校・野球部OBのNスタ・井上キャスター。その目に焼き付けたものとは?

慶応107年ぶり甲子園優勝

井上貴博キャスター:
3700校ほどの高校生の思い、プレー、学生スポーツの素晴らしさというものを感じる大会だったのかなと思います。どんなことを感じましたか?

スポーツ心理学者(博士) 田中ウルヴェ京さん:
「エンジョイ」を両校とも決勝で体現してるな、と思いました。
でも、「エンジョイ」って「楽」という字と「楽しい」という字、両方同じ字を書くじゃないですか。でも「楽」にしてなくて、「楽しい」でもなくて、「楽しむ」なんですよね。
「楽しむ」ためにどれほどの心技体の鍛錬を、もう全ての高校がやってきたかという。その頂点なだけあって、本当に素敵な試合でしたよね。

井上キャスター:
「楽しむ」ためには、しのぎを削るんだ、そこに行くんだ、という。その先頭にいたのが、まさに仙台育英高校なんですよね。本当に素晴らしい試合でした。

1回表の慶応・丸田選手の先頭打者ホームラン。あれも素晴らしいですが、あそこに立ち向かっていった仙台育英のバッテリーの素晴らしさもあります。

丸田選手が打つとき、ピッチャーの湯田投手は初球、変化球から入ったんですね。元々ストレートでどんどん押すピッチャーが、このときは変化球で緩いボールから入った。

そして丸田選手、すごい繊細なバッターなのですが、右足を大きく上げて打つんです。でも、2ストライク取られた後は右足を上げずに打つんです。バッターボックス中で打ち方を変えるんですね。

これをやる選手は本当にごく稀です。上げることによって振動でパワーを生み出すことができるメリットもあるけれども、追い込まれた後はそれよりも確実性を上げたいので足を上げない。

初球、丸田選手は足を上げて打ってます。そこに対して湯田くんは遅いボール、変化球が入ってます。バッテリーも研究し尽くしているので、ストレートじゃなくて、変化球から入って来た。

追い込んだ後の5球目、本来ストレートでもいいところを、湯田選手は同じ変化球で勝負する。そして、そのときに丸田選手は追い込まれているので右足は上げずに打ちます。それがたまたまいい形で当たって、ホームランになった。

多分、仙台育英は研究し尽くしているので、ここで丸田選手は確実性を持ってくるだろう、と。ホームランなどはないだろう、と思って投げていると思います。ですからその読み合いというのは、とてもハイレベルだったかな、と。

ホラン千秋キャスター:
本当に皆さんもちろん、“打つ”というスキルもそうですが、データを研究されている。それをどう攻略するか、という“心の部分”も大きいですよね。

田中ウルヴェ京さん:
“心”って結局、“頭”だし、頭の中には「感じる心」と「考える心」があって、その「考える心」の中に、戦術とか戦略をしっかり考え抜く。その緻密さが最後に出ていくので、そこを選手たちがみんなでしっかり考え抜く、ということがスポーツの結果には大事な部分ではありますよね。