山口県岩国市の、ある女性の話です。彼女には、重い障害がありますが、刺しゅうで才能を開花させ、道を切り開こうとしています。そこに至るまでには彼女を支える多くの人たちとの出会いがありました。

針が素早く動き、ネコの顔が出来上がっていきます。集中して糸を刺す針の動きに迷いはありません。バッグを制作・販売するチーム「はんぷ工房 結」の刺しゅう担当、久米文子さん(33)です。

久米文子さん
「エアコン扇風機付けてください」
スタッフ
「ついてるよ、エアコン。扇風機つけようか?」

就労支援事業所で刺しゅうを始める

ここは、夢ワークあけぼの。障害や難病がある人たちの就労を支援する事業所です。文子さんは自閉傾向による知的障害があり、岩国総合支援学校を卒業後、実家の岩国を離れて、周南市の周南あけぼの園に通い始めました。

当時、園では障害がある人の秘めた能力を知ってもらうためにも、質の高い商品を開発するという画期的な取り組みを進めていました。スタッフだった松村瞳さんは、文子さんの描いた絵に独特の世界観を感じて刺しゅうを勧めました。

松村瞳さん
「力強いなって思ったのが最初の印象でした。人気が出るとか有名になるっていう意識ではなく、ただ文子さんに出会った自分がこの力強さに感動したことを多くの人に知って頂きたいっていう思いでした」