北海道の知床半島沖で沈没した観光船「KAZU I(カズワン)」の事故について、国の運輸安全委員会の意見聴取会が開かれました。意見聴取会が開かれるのは16年ぶりで、参加した有識者は「事故は人災に近い」と指摘しました。

運輸安全委員会の「意見聴取会」は外部の有識者などから重大事故の原因や再発防止策について意見を聞くもので、2007年にJR福知山線の脱線事故についての「意見聴取会」が行われて以来、16年ぶりの開催となりました。

きょうの聴取会では、「失敗学」を研究する専門家が同業者から「海が荒れる」と警告を受けたにもかかわらず、経験の浅い船長と甲板員が出航の判断をしたことなどを事故の原因として挙げ、「事故は人災に近い」などと指摘。

そのうえで、再発防止策として小規模の事業者が情報共有をして互いに助け合うことや、各事業者が共同で経営とは関わりのない安全管理者を選ぶことなどを提言しました。また、長年にわたって船員の教育を担当してきた専門家は「運行管理者の資格要件を厳格化することが必要だ」と訴えました。

聴取会は一部非公開で行われ、被害者の家族も参加しました。

運輸安全委員会によりますと、被害者家族は「事故は人災だ」としたうえで、海が荒れるとわかっていたのに出航したことについて「なぜ船長は『やめます』と言えなかったのか。パワハラのような環境ではなかったか調査してほしい」と話したということです。

運輸安全委員会はきょうの「意見聴取会」の内容を踏まえて、事故の最終報告書を取りまとめることにしています。