これまで世界選手権で4つの金メダル(2013年、2015年、2019年×2)を獲得してきた競泳・瀬戸大也(29)。しかし、期待された東京五輪ではメダルに届かなかった。瀬戸が主戦場とする個人メドレーでは近年、海外若手選手の台頭が著しく、ハイレベルな戦いが繰り広げられている。29歳となった瀬戸はこの夏、どんな思いで戦いに臨むのか。共に日本代表をけん引してきた松田丈志さん(39)が代表内定直後の瀬戸にその思いを聞いた。

代表選考会を振り返って—

松田丈志:
メイン種目の200m・400m個人メドレーで無事優勝して、(世界選手権・アジア大会の)代表権を獲得しましたが、振り返っていかがですか。

瀬戸大也:
試合が始まる前は個人メドレーを中心に他の種目も強化として色々な種目に出ようと思っていました。でも夏の世界選手権、アジア大会はパリ五輪前年なので個人メドレーを本気で泳いでどのぐらいのタイムが出るか、ライバルたちとどのぐらい差があるかというのをしっかりと見極めたいなっていう思いが出てきて、結果的に個人メドレーに絞るような形にしました。(代表選考会)初日の400m個人メドレーで、4分7秒という想定している最低限のタイムが出せたので、結構自信になりました。200m個人メドレーは400mよりもスピードが大切なのですが、大会を通してバタフライと背泳ぎの泳ぎ方に関してまだ練習が必要だと思いました。

ライバルは”レオン・マルシャン”—

松田丈志:
種目を絞って来年勝負に行くという中で、ライバルとして意識してる選手はいますか。

瀬戸大也:
フランスのレオン・マルシャン選手(※1)が昨年の世界選手権で圧倒的なタイムで優勝して、自分が東京五輪で出したかったタイムを出しています。本当にパリ五輪は世界記録を出さないと勝てないという状況にもなってきていると思うので、しっかりと受け入れて、まずは今年自己ベストを出すというのをやっていきたいと思います。

松田丈志:
瀬戸選手から見て、マルシャン選手はどういうところが強いですか。

瀬戸大也:
柔らかく泳いで水を捉えるところ、スタミナが自分よりもあるなっていうのをすごく感じています。持久力もしっかりついているので、自分も持久力をどんどん戻していかなきゃいけないと思います。ベテランとして色々な勝負の仕方があるので、彼と勝負するためには自分のレースをしていかないとやっぱりメダルは無いかなと。こいつちょっとヤバいかもと思わせられるようにアピールしたいです。

※1 レオン・マルシャン(21・フランス)
2002年5月17日生まれ。昨年の世界選手権400m個人メドレーで優勝。五輪通算23個の金メダルを獲得したマイケル・フェルプスの世界記録に0秒44差まで迫る4分4秒28という驚異的なタイムを叩き出した。その水の怪物・マイケルフェルプスを指導したボブ・ボウマンコーチに師事。

アジアのライバルは”汪順”—

松田丈志さんと瀬戸選手

松田丈志:
アジア大会に向けてアジアで意識してるライバルはいますか。

瀬戸大也:
同世代の汪順選手(※2)。ずっと昔から戦ってきて、彼は東京五輪の200m個人メドレーで自己ベストを大幅に更新して金メダルを取りました。彼とレースするのがすごく好きですし、すごく人柄も良くて自分も大好きな選手。(9月23日開幕の)アジア大会にも出てくると思うので、ライバルの1人として汪順選手との勝負を楽しみにしています。

※2 汪 順(29・中国)
1994年2月11日生まれ。東京五輪では200m個人メドレーで金メダルを獲得。同種目で中国勢初めての五輪金メダリストとなった。

世界選手権・アジア大会で目指す姿—

松田丈志:
今シーズン、これぐらいのタイムを出したいという目標はありますか。

瀬戸大也:
400mは4分06秒09、200mは1分55秒55が自己ベストなので、そこを超えていきたいと思っています。なので、世界選手権で自己ベストが更新できたら、そこからの修正点をもうちょっと修正して、アジア大会でもまた記録を伸ばせたらいいなと思ってます。

松田丈志:
あと個人メドレーの日本の若い2人。本多灯選手、そして小方颯選手も瀬戸選手に挑んでいけるように、勝っていけるように頑張りたいと意気込んでいましたが、それを受けて立つ先輩として今どういう気持ちでいますか。

瀬戸大也:
自分が引っ張れるところは引っ張りたいですし、戦略とかもアドバイスできるところはしたいです。一緒に戦う仲間が決勝の舞台にいて、日の丸が二つあるだけでも強いなって思ってもらえますし。(萩野)公介がいなくなっても若い選手がすごく育ってきているので、自分は負ける気はもちろんないですし、これから個人メドレーがずっと強い日本のお家芸に、メインの種目の一つになってほしいなっていう思いで一緒に頑張りたいなと思います。

■瀬戸大也(せと・だいや)
1994年5月24日生まれ、身長174cm。埼玉県毛呂山町出身、早稲田大学卒業。2016年リオ五輪では400m個人メドレーで銅メダルを獲得。2018年アジア大会では200m個人メドレー、400m個人メドレーを制し2冠達成。金メダルを有力視された2021年の東京五輪ではメダルを逃した。現在はリオ五輪200m平泳ぎ金メダリスト・金藤理恵を育てた名匠・加藤健志コーチ(東海大学)に指導を受ける。9月23日開幕のアジア大会にも出場予定。

【アジア大会公式】
X(旧Twitter)
TikTok