動物の撮影をしていると、ときに抱腹絶倒のシーンに出会います。

タイ国立公園

日本のTV局初撮影 タイ国立公園での1シーン

コートジボワールの世界遺産「タイ国立公園」は西アフリカ最大の熱帯雨林で、「道具を使うチンパンジー」が暮らしています。彼らは木の棒や石をハンマーのように使って固い木の実を叩き割り、中身を食べるのです。この技が出来るのは、限られた地域のチンパンジーだけで、親から子へと「学習」によって受け継がれていきます。

まさにその学習シーンを撮影していたときのこと。太い木の枝に座っているチンパンジーの母と子。まず母親が枝の窪みに木の実をセットし、手に持った棒で叩き割ってみせます。

子供の前で棒で実を割ってみせる母チンパンジー

それを見た子供チンパンジーも木の実を取り行き、口の中に実を入れて戻ってきます(ポケットなどないので)。が、たくさん入れすぎて口が横いっぱい限界まで広がってしまい、まるでカールのおじさんの口の形みたいになっています。

口いっぱい実を入れた子供チンパンジー

叩き割って食べるのはひとつずつなので、これでは上手く割れても、口中の残りの木の実が邪魔して、中身を食べることが出来ません。この段階でかなり抱腹なのですが、さらに母親の真似をして、木の実を枝の窪みにセットして両手に持った棒を叩きつける・・・まではよかったのですが、セットの仕方が上手くなかったのか、木の実は転がって落下。その落ちていく実を見つめる子供チンパンジー。マンガだったら「アアッ!」という吹き出しがぴったりで、もはや絶倒でした。

実を割ろうと棒を振りかざす子供チンパンジー
あ…、実が落ちちゃった…

ともあれ、このようにして子供のチンパンジーは失敗を重ねつつ、群れに伝わる技術を学んでいくのです。タイ国立公園のチンパンジーでもうひとつ面白いのは、ハンマー代わりに使う石を群れで共有していること。木の実を割るのにちょうどいい石は限られているので、みんなで同じ石を使い続けているのです。

日本のテレビ局でこのタイ国立公園を撮影したのは、TBSの「世界遺産」が初めてです。チンパンジーには人間の病気が伝染する恐れがあるため、撮影スタッフは五日間の検疫期間を経て、健康であることを確認した上で撮影に臨みました。通常は研究者以外の立ち入りが禁止されているのですが、こうした研究チームの協力とチェックを受けて貴重かつ笑撃的な映像を記録することが出来たのです。

絶滅危惧種のゴリラが暮らす世界遺産

人間に近いというとゴリラも同じ。コンゴ民主共和国の世界遺産「カフジ・ビエガ国立公園」は絶滅危惧種のヒガシゴリラが暮らしています。