「父が母の奴隷に…」一転した日常
ある日、娘の優香さん(仮名)と母・佳寿美さんの2人は、近所のディスカウントストアへ買い物に出掛けていた。取り立てて何かがあった訳ではないので、詳しい日時を記憶している訳でもない、そんなありふれた日常の1コマだった。
(前編・後編のうち前編)
だが、その日を境に、母の様子は大きく変わったという。
「父が、母の奴隷みたいになった」
佳寿美さんは「家事をしなくなった」。
そして父の宗武被告は「すぐに謝るようになった」。
法廷で証言台に立った娘・優香さんは、そう振り返った。
「妻を殺しました」

2022年8月22日、午後9時29分。警察に、1本の電話が入った。
「妻を殺しました。首を絞めて殺した」
殺人未遂の疑いで逮捕されたのは、被害者の夫・藤田宗武被告(54)(※当時、容疑者)。

現場は、愛媛県新居浜市内の自宅マンションの一室。約10分間、首をタオルで締め付けられた妻・佳寿美さん(当時57)は、意識不明の重体で救急搬送され、翌23日午前9時17分に死亡。
検察は宗武被告を殺人罪で起訴した。
裁判で認定された事実などを元に、事件と裁判を振り返る。