かつて東京都心では、カラスが増え過ぎて問題になっていました。
繁華街でゴミを漁り散らかす、鳴き声が騒音レベルだ、フンが汚い、いきなり襲われた、などと大ブーイングでした。悪い意味で大きな存在感。ちょうどその頃、私たちはカラスにまつわる面白い話を聞きました。「カラスは、誰かが『助けて』と叫ぶと、みんなが助けに来る」と言うのです。早速、番組で試してみることにしました。1995年のことです。映像への期待は高く、ヘリまで飛ばすことにしました。結果は予想を超えたものでした。
(TBSテレビ「どうぶつ奇想天外!」初代プロデューサー戸田郁夫)
カラスは、誰かが『助けて』と叫ぶと、みんなでやって来る
1995年の晩秋、都心で最大のねぐらだった明治神宮の森。 そのすぐ近くのビルの屋上に天敵フクロウの模型を置き、その周りにカラスの模型を並べました。そしてスピーカーから、カラスがフクロウと戦う声と、助けを求める声を同時に流します。研究者からお借りした実際の声です。

始めてから8分後、神宮の森が騒がしくなってきました。カラスたちは森の上を飛び回った後、こちらに向かってきます。そしてあっという間におよそ600羽のカラスが私たちの上空を旋回しはじめたのです。「助けを求める仲間の声に反応し、集まってくる」というのは本当でした。そしてその数も声の大きさも、私たちの予想を大きく超えていたのです。


カラスは普段からよく鳴きます。カラスのコミュニケーション。「危ないぞ」「助けてくれ」「あっちへ行って」「私よ」「キミかあ」。カラスが賢いことはよく知られていましたが、仲間同士でこんなに助けあうとは意外でした。カラスって案外いい奴じゃないか、と感心したものです。
この頃、都心には今のおよそ3倍ものカラスがいました。特に、新宿や渋谷の繁華街から食べ物のゴミが大量に出て、早朝から食べ放題。冬場のエサにも困らないので、カラスはその後もどんどん増え続けていきました。

石原東京都知事の「カラス退治」が始まった
この放送から6年が経った2001年、当時の石原慎太郎東京都知事が「カラス対策プロジェクトチーム」を発足させました。