「年収の壁」は政府の補助金で対応。「賃金と物価の好循環」の手立てはこれから

年収が一定額を超えると社会保険料などの負担が生じるため、労働時間を抑える、いわゆる「年収の壁」を解消する方向で政府が検討していることがわかった。保険料を肩代わりした企業に、従業員1人当たり最大50万円の助成金を払う方向で調整しているということだ。
――「年収の壁」は昔から言われている問題だが、解消するために事実上政府が補助金を出して社会保険料を出すと。なぜ制度を変えようという議論にならないのか。
BNPパリバ証券 中空麻奈氏:
今までの固定的な税制は基本的には日本で昭和40年、50年にあった高度成長期の間にできてきた税制で、お父さんは働きに行き、お母さんは専業主婦で子供が2人いるという典型的なパターンが税制の基本です。そうすると今違っていることについて、誰も変えていないので、いろいろなところできしみが出てしまうわけです。このきしみを変えたいと思っているのだけど、ドラスティックに変えると明らかに損をする人たちが出てきてしまうので、この人たちをどう救済したらいいかとなると、それが補助金とかちょっとずつ小出しな話になってしまっているのが現状かと思います。でも、本当に抜本的にやらなければいけないです。
――岸田首相の「これだけはやりたい」というものを感じているか。
BNPパリバ証券 中空麻奈氏:
賃金と物価の好循環については深く思っていらっしゃると思います。その方策として何が適切かということについてはまだあまりみんなにピンと来ていないのだと思います。私は競争力を強化することだと思っているのですが、総理の意見はこれから出てきて、何を手立てとするかがわかっていくと思っています。
――賃金を上げる主体は企業で、その親玉は経団連会長であり、経済同友会の代表幹事だ。彼らは来年以降、構造的に賃上げを進めていこうという決意を持っているのか。
私はそう思っています。(経済同友会の)新浪さんも(経団連の)戸倉さんもそういう意識がすごくあって「分厚い中間層を作っていくぞ」という意思がとても固いので、期待できるのではないでしょうか。
(BS-TBS『Bizスクエア』 7月1日放送より)