全国の被差別部落の地名を本やインターネットに載せた出版社に対し、部落解放同盟などが公開の差し止めなどを求めた裁判で、二審の東京高裁は一審よりも差し止めの範囲を拡げ、賠償金額も増やす判決を言い渡しました。原告側は「差別されない権利を認めた画期的な判決だ」と評価しています。

この裁判は、川崎市の出版社「示現舎」などが全国の被差別部落の地名リストを本やウェブサイトに掲載することが「差別を助長する」として、部落解放同盟と原告234人が出版・公開の差し止めや損害賠償を求めているものです。

二審の東京高裁はきょうの判決で、部落差別について「人間としての尊厳を否定するものに等しく、許容することができない」と指摘した上で、「差別意識が依然として存在していることは明らかである」としました。

その上で、「憲法の趣旨などに鑑みると、人は誰しも不当な差別を受けることなく、人間としての尊厳を保ちつつ、平穏な生活を送ることができる人格的な利益をもつ」と指摘し、被差別部落の地名を公表することはこれを侵害するものと認めました。

東京高裁は今回、賠償額を一審から引き上げて550万円としました。

また、一審では、訴えを起こした原告の現住所や本籍地が置かれていないため、差し止めを認められなかった6つの県についても、過去に原告が住んでいたり、親族が住んでいたりする場合も差別を受ける恐れがあるとして、差し止めを命じました。

ただ、原告側は地名が出た全ての都道府県で差し止めを求めていましたが、10の都府県のものには差し止めが命じられませんでした。

日本では差別を明確に禁じた法律はなく、一審の東京地裁はプライバシー権の侵害を理由に差し止めを命じていました。

弁護団の指宿昭一弁護士は「一審では否定されていた『差別されない権利』を控訴審判決は認めた。こうした判決は弁護団が認識している範囲では初めてだ」と評価しました。

部落解放同盟側は会見で「差別を包括的に禁止する立法がなされることが大事だ。差別されない権利を高等裁判所が認めたことは大きい」と述べました。

差別的表現への対応をめぐっては、外国にルーツをもち、ヘイトスピーチの被害にあった人や、性的マイノリティーの人たちの間でも明確に差別を禁止する法律を求める声がでています。