石川県は小松空港の国際化や活性化などを見据え、2本目の滑走路整備に向けた議論や調査を進めています。この“第2滑走路”をめぐりこれまで10年近く議論が続けられてきましたが、ここに来て大きな正念場を迎えています。

27日開かれた県議会6月定例会の予算委員会。10年もの間、小松空港の滑走路増設を求め注力してきた福村章県議は、持ち時間30分すべてをこの第2滑走路に関する質問に費やしました。

福村 章県議


福村章 県議
「正念場を迎えるわけです。これからの30年を考えて誤りのない決断と実行を知事にさらに求めます」
福村県議が語気を強めるのもそのはず。

この1週間前に馳知事が直接、防衛省を訪問。第2滑走路の整備に向けて調査を行うよう求めたところ、防衛省側が「現状の1本の滑走路でも支障はない」と答え、難色を示したためです。去年3月の知事選で、滑走路の増設を公約に掲げ当選した当の馳知事は。

馳知事
「率直に申し上げて国側の反応は大変厳しいものであったと言わざるを得ませんが、防衛省として積極的にもう1本滑走路が必要とはいえないということであり、第2滑走路自体を明確に否定されたものではないと受け止めている」

馳知事


1961年の開港時から、“共用空港”として航空自衛隊の戦闘機と民間の航空機が1本の滑走路を共有している小松空港。しかし今後、国防上や災害など有事に備えた機能強化のほか、海外からのインバウンド需要回復をみすえた国際便の増便に向け、民間機だけで利用できる滑走路の整備を目指しています。

そうした一方、県の調査によりますと、2050年に想定される小松空港の民間機の発着回数は2万1000回。これは、国が定める滑走路新設の基準となる“10万回”に遠く及びません。しかし、これについても福村県議は異を唱えます。

福村章 県議
「基地の回数を入れずして2万1000回というのは誠に片手落ち。民航機だけなら我々は第2滑走路を望むはずがない」

馳浩 石川県知事
「政府に決断を求めていく努力をすることが、いま私に与えられた使命ではないかと考えている」

20日、防衛省を訪れ色よい返答がもらえなかった馳知事ですが、あくまで「現時点で防衛省が積極的に2本目を必要としていない」という認識を示したうえで、「いくつか選択肢を準備しておくのが知事の責務」と述べました。選挙公約にも掲げただけに、第2滑走路の整備に向けた知事の意欲は、思いのほか強いようです。

福村県議は今からちょうど1年前、安倍元総理が来県した時のことを思い返します。

福村章 県議
「一緒に昼食をとった時、安倍元総理が“これから併用滑走路は問題外”“小松が考えているなら早くやった方がいい”と言った。その2週間後に亡くなられたわけで…小松での最後の遺言だったと思っている」

県による調査で課題も徐々に見えてくる中、小松空港の第2滑走路は実現するのでしょうか。

第2滑走路の配置案


第2滑走路は空港から海寄りの場所での建設を前提に3つの案があがっていて、このうち現在の滑走路に最も近い位置で、事業費が比較的小さく見積れるA案が最も有力視されています。周辺に住む人からは戦闘機の騒音を不安視する声もあがっていて、馳知事は「周辺地域への影響を踏まえ、県民に対する説明責任を果たしていきたい」としています。

国の基準は“10万回以上”だが…


県の調査では民間機の発着回数がコロナ禍前で1万6000回余り、2050年でも2万1000回、国土交通省が10万回以上必要との基準を示していることを考えれば、やはりハードルは高いように見えます。ただ、この2万1000回は民間機のみの試算です。国防上の問題から戦闘機の発着回数は明らかにされていませんが、ここに上乗せされてきます。

さらに、この10万回という基準に満たなくても滑走路を2本もつ地方空港もあります。茨城空港には航空自衛隊の百里基地がありますが、コロナ禍前の発着回数は年間6000回足らずで、小松空港のおよそ3分の1程度です。単純に、発着回数だけにとらわれることのないような議論が必要とも言えます。