深海での水圧

深海の大きな特徴が水圧の高さです。水圧は、10メートル深くなるごとに1気圧ずつ高くなっていきます。水深6,500メートルでは、およそ660気圧。小指の先ほどの表面積の上に軽自動車(約680キロ)が乗っているほどの圧力となります。

光も電波も届かない…

今回、行方不明になった潜水艇「タイタン」は、タイタニック号から500mほど離れた場所で見つかりましたが、深海での捜索は、容易ではありません。深海では、強力なライトでも数メートル先しか見えず、電波も届かないためGPSも使えません。水の中では、音波だけが遠くまで伝わるため、音を頼りに捜索が進められ、「タイタン」が消息を絶ったのと同じ時間帯に現場付近でアメリカ海軍が探知した「破裂音」が決め手になったとみられます。この「破裂音」の位置情報で目星をつけ、無人潜水機を投入したところ、タイタンの残骸が発見されました。

注目が高まる深海ツアー

さて、タイタニック号へのツアーだけではなく、今、深海へのツアービジネスが熱を帯びています。2020年にはアメリカの企業が、世界で一番深いマリアナ海溝のチャレンジャー海淵へのツアーを1人75万ドル=およそ1億円で販売すると発表。「エベレストは4000人以上、宇宙は562人。しかし、チャレンジャー海淵はたったの7人しか到達していない」と、その希少価値をアピールしています。東海大学の山田吉彦教授は「今回の潜水艇は”実験船”で、世界の認証機関などの検査を受けていない今後、国際ルールの隙間をつくような船が出てこないようなルール作りが必要」と指摘。タイタニック号の事故を契機に安全基準が見直されたように、新たな対策が求められているのかもしれません。

(「サンデーモーニング」2023年6月25日放送より)