「世にも奇妙な」世界遺産

「世にも奇妙な」と形容できる世界遺産がいくつかあります。ひとつは、アルゼンチンの「リオ・ピントゥラスの手の洞窟」。

リオ・ピントゥラスの手の洞窟がある断崖

南米大陸の南の果て、荒涼たるパタゴニア地方を流れるピントゥラス川。その渓谷の断崖にある洞窟で、手の壁画が実に800以上も描かれています

手の壁画

大きさは人の手と同じで、色は赤、黒、緑と多彩。中には六本指の手や、動物の手(足?)まで描かれていて、モダンアートのような趣すらあります。古いものは9000年以上前、新しいものは約500年前に描かれたとする研究者もいるので、数千年にわたって手が描き続けられてきたことになります。

6本指の手の壁画

左手の壁画が多いため、右手にストロー状の動物の骨を持ち、口に含んだ顔料を岩壁に押しつけた左手に吹きかけて描いたものと推定されています。それにしても一体、誰が何のために描いたのでしょうか。

何のために手ばかり…

パタゴニアにはテウェルチェという先住民がいました。彼らは定住せず、狩猟採取をしながら移動生活をしてきたのですが、このテウェルチェの祖先が「手」を描いてきたとされます。この一帯には世界遺産になった洞窟以外にも、手が描かれた洞窟がいくつもあり、テウェルチェの祖先は洞窟から洞窟へと移動しながら長年にわたって手形を残してきたのです。このように「誰が」というのは分かっているのですが、何のために手ばかりたくさん描いたのか、その理由は分かっていません。

巨大な石の球が森の中にゴロゴロ

世にも奇妙な世界遺産、もうひとつは中米コスタリカの「ディキスの石球」です。ディキスという地域で1930年代にバナナ農園を作るために森を開拓していたところ、大きな石の球が次々と発見されたのです。これまでに見つかった石球は200個以上にもなります。