福島第一原発の処理水を海へ放出する設備について、東京電力は12日、不備がないかを確認する試運転を始めました。海洋放出に向けた準備が進む一方で、懸念や反対の意見は根強く残っています。日々、福島の海で漁業を営んでいる男性は「うそをつかないでほしい」と訴えています。
福島県いわき市の四倉港を拠点に漁業を営む、三浦孝一さん(70)。震災前は、弟と次男と一緒に漁をしていましたが、震災後は、漁獲量が減ったため、いまは一人で操業をしています。この日は、刺し網漁で、ヒラメやカニを水揚げしました。
福島の漁業は、魚の種類や海域を制限する試験操業を終え、本格操業に向けた「移行期間」の中にあります。海洋放出について、漁業者の理解は進んでいないと話します。
三浦孝一さん「(理解の深まりは)ないない。深まってはいない。(海洋放出は)漁業を生業としている人に対してはすごく痛手。震災だけでまいっているのに、原発事故で汚染水に今度の処理水」
三浦さんは、漁業者の意見をよく聞いてほしいと話します。
三浦さん「やはり風評(を一番懸念している)。海水で生業として魚を獲って生きているわけだから、その人たちの意見をよく聴かなければならない。それは上の空だもの。我々福島県だけではなく日本全国、世界中の問題それを少しないがしろにしている感じがする。軽く考えている」
安全性に対して、科学的な根拠を示すだけでは理解は進まず、お互いの信頼関係が大切だといいます。
三浦さん「漁民がこう言っているから、海で生活している色々な業者の人がこう言っているからと言葉をうまく利用して、言葉のマジックですらっと流されてしまう。それが一番問題だと思う」
国や東電は書面で「関係者の理解なしにいかなる処分も行わない」と県内の漁業関係者と約束を交わしています。三浦さんは、「うそをつかないでほしい」と訴えます。
三浦さん「処理水の問題は避けては通れない問題だが、正確に何事かあったらすぐ(知らせてほしい)。後継者、若い人たちに受け継ぐには、うそをつかない本音で語ってもらわないと。それが一番だと思う」














