「やっぱり本ってしぶとい」 本を読むということは『自分との対話』
3年以上、世界が向き合ってきた、新型コロナのパンデミック。小川さんは改めて「小説の持つ力や可能性」を認識したと話します。
(春川正明さん)
「この2~3年、新型コロナで社会が大変なことになりましたけど、それは書き手として影響はありましたか?」
(小川洋子さん)
「世界中が大騒ぎなっていても、小説を読むことは誰にも禁止されなかった。お芝居やスポーツや飲食店がみんな禁止になっていた中で、人間の生活が狭められていく中で、本を読むことは誰にも禁じられなかった。やっぱり本ってしぶといな、すごく生き残る力を持っているし、人間が本当に危機に陥った時に一冊の本があれば、もしかしたらそれがその人の救いになるかもしれないんだな。自分はそういうことに関わっているんだなということを再認識させられました」

(春川正明さん)
「次の作品は書かれている?」
(小川洋子さん)
「今度は、『名前が出ないシンガー』。コマーシャルの一節だけを歌うとか、決して名前が表に出てこない歌手というのをいま取材しています」
(春川正明さん)
「日の当たらないような人に焦点を当てたい?」
(小川洋子さん)
「大谷翔平選手や佐々木朗希選手のことをみんな書きますからね。もしかしたらあのWBCにブルペンキャッチャーっていうのはついていたのかな?とか考えたりすると、だんだん小説が書きたくなってくる」

最後に、改めて本を読むことの魅力について伺いました。
(春川正明さん)
「本を、あまり読んでいない人々へのメッセージを頂戴できれば」
(小川洋子さん)
「今いろんな道具で一瞬にして世界中の人とつながることができて、それはそれで有益なことなんですが、本を読むということは『自分との対話』なんですね。それに浸れることは多分、『本を読むこと』以外にない。そういう体験ができる」
「色んな人と何人とつながった、ということじゃなくて、自分で自分の声を聞いて自分の心の許容量を広げて、そうすることによって他者を受け入れることがようやくできる。自分の心を広く豊かにするためには本を読んで、本の中にでてくる登場人物、無言の登場人物たちと会話することが大事だなと思います」
