「だんだん書きたいことが社会の隅の方に寄っていく」 秘書係的な作家

(春川正明コメンテイター)「35年やってこられて、何か変わってきているんですか?」

(小川洋子さん)
「だんだん書きたいことが『社会の隅の方に寄っていく』と言いますかね。社会からはみ出して、今にも暗闇の中に堕ちそうな寸前の人とか、あるいは既に死んでしまっていて、何も言い残すことのないまま世を去って行った無数の死者たち、そういう人たちの声を書き記しておきたいという、『秘書係的な作家』という立場じゃないかなと思うようになりましたね」

今年3月、日本の芸術界を代表する「日本芸術院賞」に輝きました。受賞に際し、「作品には、骨に似たしっかりとした固いものがある」と評された小川さんです。

(コメンテイター 春川正明さん)
「芸術院賞受賞おめでとうございます。今まで色んな賞を受賞されていますけど、今回の芸術院賞は特別な思いがありますか?」

(小川洋子さん)
「最初、お知らせ頂いたときには本当にびっくりした。もっと年上のベテランの方が受賞するものだと思っていたので、まだ自分は『若造』のつもりだったので、そういう意味でも意外でした」

(春川正明さん)
「何か、重みみたいなものは?」

(小川洋子さん)
「芸術ですので、その中に文学が入っているということで、その中で選んで頂いたという責任と言いますか。文学が持っている『人を救う力、人をつなげる力』とか、文学が持っているものを伝えていかなくちゃなというふうに思いました」

(コメンテーター 春川正明さん)
「ちょっと下世話な話ですけど、今まで数々の有名な賞を受賞されてきて、どの賞を受賞した時が嬉しかったですか」

(小川洋子さん)
「はっきりしていまして、“本屋大賞”ですね。“本屋大賞”は第一回目だったということと、読者に届けてくれる現場の方が、手作りで作ってくださった賞だったということ。そして賞品が店頭に、書店員さんが手作りで手書きにしたポップをスクラップしたものが賞品だったんです。こんなに体温が伝わってくる賞というもののは、“本屋大賞” 以外なかったですね」