就任後初めての金融政策を決める会合に臨んだ日銀の植田和男総裁。最初の一手は、現状維持だった。
大規模金融緩和策の継続を決定。過去の検証実施も発表

日銀 植田和男総裁:
金融政策上の基本方針としては、経済、物価、金融情勢に応じて機動的に対応しつつ粘り強く金融緩和を継続していくことで、賃金の上昇を伴う形で2%の物価安定の目標を持続的、安定的に実現することを目指していく方針です。2%の安定目標の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで長短金利操作付き量的質的金融緩和を継続します。マネタリベースについては生鮮食品を除く消費者物価指数の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで拡大方針を継続します。
4月28日、日銀は黒田前総裁から約10年間続く大規模な金融緩和策を継続することを全員一致で決めた。日銀からの発表は午後1時。黒田前総裁の時は正午前後に出ることが多く、1時間近く遅れたことに市場関係者に動揺が走った。政策修正を打ち出すのではとの思惑から外国為替市場では売り買いが交錯する一幕があった。

結局現状維持だったため、利上げを続けるアメリカとの方向性の違いから円売りドル買いが進み、1ドル135円台後半と一時3円近く円安が進んだ。

株式市場では安心感から買い注文が広がり、日経平均株価の終値は2万8856円で、年初来最高値で取引を終えた。
多くの人が上振れるリスクを心配する物価見通しについては、「今年度半ばにかけてプラス幅を縮小していくと予想している」と述べた。

日銀は28日発表した展望レポートで、2023年度と24年度の物価見通しについて、それぞれ1月時点より引き上げた。
日銀 植田和男総裁:
輸入物価の上昇を起点とする価格転嫁の影響が減衰していくことで、23年度半ばにかけてプラス幅を縮小していくと予想しています。その後は、マクロ的な需給ギャップが改善し、中長期的な予想物価上昇率や賃金上昇率も高まっていくもとで、それを伴いながらも再びプラス幅を緩やかに拡大していくと見ています。
物価が上振れて金融政策が後手に回ってしまうリスクについては、「引き締めが遅れて2%を超えるインフレ率が持続するリスクよりも、拙速な引き締めで2%を実現できなくなるリスクの方が大きく、基調的なインフレ率の上昇を待つコストは大きくないと判断しています」と述べた。
――拙速に動くと2%を達成できないリスクの方が大きいから、もう少し緩和を続けたいということに集約されるか。

東短リサーチ代表取締役 チーフエコノミスト 加藤出氏:
そう近いうちの政策変更はないというメッセージです。基本的には黒田緩和路線を引き継いで、インフレ2%が先を見通してもしっかりと定着するまで今の政策を続けるという方針です。