82年ぶりに寺に戻った元禄の音

新潟県出雲崎町の万因寺。
このお寺の鐘は戦時中の1941年に、武器の材料にするため国に供出されていましたが、さまざまな縁が“奇跡”を結び、このたび、戻って来ることができました。

釣鐘を見つめる高橋速円住職が指さすところには、寺の名前がしっかりと記されています。江戸の元禄期に鋳造された、高さおよそ130cm、重さ約400kgの釣鐘。
この寺に帰ってくるのは82年ぶりです。

【万因寺 高橋速円住職】
「感無量です。ある日突然一通の手紙をいただいいてからの話ですから…。やっぱり戦争はあってはいけないってことですね」

およそ400年前に建てられた万因寺。
この寺から鐘が消えたのは1941年のことでした。


太平洋戦争の開戦が迫る中、政府は、鉄砲など武器の原料にするため金属類の供出を求める『金属類回収令』を公布。万因寺も釣鐘を手放すことになりました。

【万因寺 高橋速円住職】
「仏様の教えが伝わるように梵鐘を鳴らすわけですから…。戦争の犠牲になるってことはいたたまれないでしょうね」

しかし回収から52年後の1993年に、石川県志賀町のとあるお寺から、思いがけない知らせが届きます。

【万因寺 高橋速円住職】
「以覚寺さんに“万因寺の梵鐘”がありますと」


万因寺の釣鐘は溶かされてはおらず、石川県志賀町の『以覚寺』に今もあることが判明したのです。