今年3月からJR東日本などが発行している「障害者用ICカード」。しかし、利用対象の障害者から「利用できないと言われた」との情報がTBSに寄せられました。公共交通機関にはない、鉄道だけの“謎ルール”。当事者たちへの取材から「障害者割引は何のためにあるのか」を考えます。
障害者割引 「ひとりで利用はダメ」 鉄道だけの“謎ルール”

NEWSDIG 久保田智子編集長:
今回注目するのは「鉄道の謎ルール、障害者割引、“ひとりで利用はダメ”」という記事です。JNNのニュースサイト「NEWS DIG」で、とても読まれた記事です。
3月18日からJR東日本・PASMOを導入している鉄道やバス会社で、障害者用ICカードの発行が開始になりました。これまで障害者割引を受けようとすると、障害者手帳を駅員に見せることが必要だったんですが、かなり手間が省けるということです。
ところが、TBSに障害等級1級の山口健志さんからこんな情報が寄せられました。

障害等級1級 山口健志さん
「“障害者ひとりでの利用はできない”と言われた」
山本恵里伽キャスター:
1人ではできない。誰か一緒じゃないと駄目と。

久保田編集長:
実は利用条件がありまして、「別々または単独で、ご利用いただくことはできません」(関東ICカード相互利用協議会資料より一部抜粋)と書かれています。障害者用ICカードは2種類あり、それぞれ「障」と「介」と書いてあります。実は、「障害者」と「介護者」。この2つがセットでないと利用、そして購入することもできないということです。
小川彩佳キャスター:
障害者の方、お1人で利用される方もいらっしゃいますよね。

久保田編集長:
対象外として、普通料金で乗っていらっしゃるんだと思います。一体なぜ、こんなことになってるんでしょうか。実は元々鉄道では、介護者同伴が割引の条件になっていたんだそうです。ただ他と比べると、鉄道以外のバスやタクシー、飛行機などは、ひとりでも可となっているということで、かなり差があります。
世界に目を向けると、ヨーロッパなどの諸外国では、単独利用が割引の対象と制度化されているところも多いということです。なのに多くの鉄道会社では、「単独では駄目」というのは、ますます謎が深まりますね。実際どうしてなんでしょうか?その背景について、首都圏の私鉄会社に聞いてみました。

私鉄A担当者
「古い規則なので、なぜ“介護者同伴”でなければいけないかはわからない」
私鉄B担当者
「旧国鉄時代の制度を踏襲し、現在も運用しているのだと思う。規則だからどうしようもない」
小川キャスター:
「わからない」「どうしようもない」と言い切っているところは、なかなか…
久保田編集長:
謎が深まります。番組で調べてみました。実はこういう規則があるんです。

【旧国鉄が定めた割引規則(1950年~)】
「介護者を伴わなければ、旅行できない身体障害者について、2人分の運賃を実質的に1人分に割り引くことで負担を軽減しようという考えで始めた制度」
注目してもらいたいのが、1950年に定められていて、70年以上前の規則が理由になっているということです。
小川キャスター:
時代は変わり続けても、前例を踏襲し続けているということなんですね。
山本キャスター:
そのときと環境も全然違いますよね。バリアフリーも進んでるし。