女性アスリートの中には、激しいトレーニングによって生理が来なくなったという悩みを抱えている人は少なくありません。思春期の子供たちや男性の指導者にもっと生理について理解を深めてもらおうと、五輪メダリストの中村美里さんが自身の体験を語りました。
◆20代後半に初めて生理痛
*講演会
「生理はうつる?イエスかノー」「アンサーいきますよ。ノーです!」
先月、佐賀市の佐賀商業高校で開かれた「生理とスポーツ」をテーマにした講演会。登壇したのは、柔道の元日本代表で北京オリンピックとリオデジャネイロオリンピックで、銅メダルを獲得した中村美里さんです。中村さんは高校生のころ、階級に合わせて減量したことで1年半以上生理が止まったといいます。
中村美里さん「体脂肪率も10%を切っているくらいだったので、それで生理が来ていないんだなという」
ピルを服用することで生理不順を改善していった中村さん。その後、20代後半になって初めて生理痛を経験しました。
中村美里さん「衝撃でした。これまでは生理痛がなくて、(個人差があることを)女性でこんなに分かってあげられなかったら、男性はもっと分かってあげられないのかなという風にも思いました」
◆男性教諭「全く無知だったので…」
部活動で顧問を受け持つ男性教諭も、中村さんの話に熱心に耳を傾けていました。
男性教諭「どういう風に、生徒が痛みを感じているときとかに対応していいかというのも全く無知だったので」「私の方は良くても、生徒の方は気を使うということがあったりと」
講演会を主催した元競泳日本代表の伊藤華英さんは、男性の指導者も女性の生理についてもっと理解する必要があると話しています。
「スポーツを止めるな」理事で元競泳日本代表の伊藤華英さん「体調が悪そうだね。どうしたのとか、間接的な声がけを心がけて頂ければ。『言っても仕方ないかな』と諦められる存在ではなくて、ある程度知識を持って『先生にまず相談してみよう』と思える信頼関係も必要だと思います」
◆佐賀県内初の「女性アスリート外来」
佐賀県が去年8月に講演会で実施したアンケートで、女性アスリート特有の健康問題について「誰かに相談したいと思ったことがある」と答えた人は、53%に上りました。ただ、そのうち63%が「相談しなかった」と答えています。
こうした問題を解決しようと、今年1月に佐賀県内で初めてとなる「女性アスリート外来」が、佐賀市の佐賀中部病院に設けられました。担当の医師は、運動と生理の関連についてこう説明します。
佐賀中部病院 坂西愛婦人科医長「エネルギー不足といって、食べてとるエネルギー量と運動で消費する量が見合っていないということが問題になります」
◆最も心配な「骨への影響」
過度な運動によってエネルギー不足に陥ると、女性ホルモンの分泌が減少します。最も心配されるのが骨への影響です。
佐賀中部病院 坂西愛婦人科医長「(10代は)20歳に向けて骨がしっかりしていくのに大事な時期で、高校生くらいの年齢で生理が止まると骨量が増えないので、大人になっても骨の量が増やすことができないという問題」
ただ、部活動で結果を残したいという生徒の気持ちも無視することはできません。
佐賀中部病院 坂西愛婦人科医長「大会で記録を残したいし、本人の体調も大事ということで、そこは今の課題。練習が過度で食べる量が追いつかないのであれば、練習量を減らして頂くという提案をこの先していかなきゃいけない。まずは(リスクを)知って頂くことが大事」
坂西婦人科医長によると、生理が3か月以上来ない「無月経」になりやすい競技として、陸上の長距離など持久系の競技、ダンスなどの体型が結果に結びつきやすい「審美系」と呼ばれる競技が挙げられています。3か月以上生理が来ていない人は、専門外来を受診してほしいと、坂西婦人科医長は話しています。
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