鉄道とバスが一つになった次世代の乗り物、DMV(デュアル・モード・ビークル)が徳島県南部と高知県東部で運行を始めて1年が経った。乗客の数も約2倍に増え、地元ではDMVを機に地域活性化への取り組みが進められている。
世界初導入で経費節減も実現。乗客を観光に誘導できるかがカギ

2021年12月、世界で初めて阿佐海岸鉄道が導入したDMV。見た目は普通のバスのようだが、向かった先にあったのは鉄道の線路だ。道路から線路に乗り込むと車体の下から車輪が出てきて、バスから鉄道に姿を変えた。その間わずか15秒。世界初の鉄道とバスの二刀流だ。
DMVは平日、サーフィンの名所として知られる海陽町の「阿波海南文化村」から「道の駅 穴喰温泉」までの約15キロを走行し、運賃は800円。土日祝日には高知の室戸半島まで運行。運賃は2400円だ。
DMVは国が定めた条件により運行ダイヤは一方通行で組む必要があったが、線路部分が8.5kmと短いこと、踏切も長いトンネルもないことから実現した。最盛期に年間17万人乗った客数はコロナ前には2万3600人まで急激に落ち込んだが、DMVの運行を始めてから4万2894人まで戻した。

阿佐海岸鉄道 大谷尚義取締役総務部長:
おかげさまでコロナ前の約2倍弱ぐらいの皆様が今乗ってくださっています。ディーゼル車両に比較すると燃費はかなり良くて2、3倍以上を走るということになるので、経費の軽減にも。
DMVはコスト面でも経営に大きく貢献するという。車両がコンパクトなため従来のディーゼル車両と比べ燃費が良く、線路の保守費用も大幅に抑えられる見込みだ。さらに高架を走っているので、津波などの災害時の交通機能を維持することが可能だという。
大谷部長:
地域の公共交通機関を守って、DMVが普通の生活の中に溶け込んで皆様の足として使っていただける。新たな人の流れを増やして地域の経済効果を上げていきたいと思っています。
DMVについて地方自治体からの問い合わせも多く、ローカル線の救世主という大きな可能性を秘めている。しかし、一方でDMVに乗った後、特に観光もしないですぐに帰った乗客もいた。

徳島県が行ったアンケート調査の結果、利用者の6割以上がDMVの乗車を目的としており、観光目的は2割程度にとどまった。そこで町は一念発起した。DMVの始発駅「阿波海南文化村」は海陽町の歴史、文化を学べる博物館や藍染などを体験できる工芸館などがある総合教育施設だ。

海陽町教育委員会 森崎忠憲次長:
DMVが阿波海南文化村をスタートとしてあることで、最初にここにお客様がたくさん訪れているということですので、1.5倍ぐらいお客様は増えているという状況です。
DMVの関連グッズが人気だ。

三幸館 中村悠店長:
DMVの始発駅ということもありますので、DMVに関連した商品は根強い人気があります。

「DMV最中」はユニークなお土産が欲しい大人や子ども連れにも人気だという。DMVの車体やタイヤなどのパーツをかたどったモナカの皮にあんこを詰めて、自分で組み立てることができる。実際のDMVと同じようにバスモードから鉄道モードへの変更も可能だ。DMV最中を作っているのが創業100年を超える老舗の菓子屋「山田宝来堂」だ。

山田宝来堂 山田直人社長:
世界初の乗り物がやってくるということを受けて、町で何かお土産物が必要だろうということでいろいろ考えてやったつもりです。
DMV最中は徳島空港や徳島駅、地元の道の駅でも購入が可能で、売れ行きも好調だという。
山田社長:
思った以上に売れていて、当初2000セットぐらい売れたら御の字だと思っていたのが、その3倍ぐらいは今売れています。