フィギュアスケート世界最高峰のアイスショー『スターズ・オン・アイス2023ジャパンツアー』が開幕した。3月30日から3日間行われた大阪公演では、ソチ・平昌五輪2大会連続金メダルの羽生結弦(28)さんをはじめ、世界選手権の金メダリストなど豪華メンバーが集結。


マスク着用を条件に声援も復活。そんな会場のボルテージを一気に上げたのは、冒頭から登場した羽生さん。スポットライトに照らされた氷上で自ら振り付けた珠玉のパフォーマンスを披露した。総合演出のジェフリー・バトルさんによると今回のテーマは“Origin Story(原点)”。頂点を極めた世界のトップスケーターが競技とは異なり、「スケートを楽しむ」ための最高の空間を作り上げている。

先月の世界選手権で日本女子初の連覇を達成した坂本花織(22)は、『Love Shack』と『マトリックス』を披露。自身が「坂本花織全開のプログラム」と謳う『Love Shack』では、観客の手拍子に合わせて頭を上下に振ったり、リンクに寝そべったりと笑顔溢れる演技で会場を盛り上げた。観客とスケーターとの距離が近く、臨場感を楽しむことができるのがアイスショーの魅力。坂本も「リンク上でお客さんの近くを通ることがこれまで滅多になかったから、お客さんの盛り上がりで自分もすごく盛り上がれて、とても楽しかった」と嬉しそうな表情を見せた。


日本男子初の世界選手権2連覇を果たし、「オフシーズンはアイスショーで表現を磨きたい」と意気込む宇野昌磨(25)は『Great Spirit』と今シーズンのエキシビション「Padam,Padam」を披露。右足首の怪我は8割程度まで回復したというが、大事をとって高難度のジャンプは回避。音楽をどう表現するかにこだわっている宇野にとって北京五輪以来となる羽生結弦との共演は大きな刺激になっているという。「ずっと後を追わせてもらって、お兄ちゃんのように面倒をみてもらって育ってきた。久しぶりに一緒に滑ったら前とは比べ物にならないほどジャンプも表現も磨きがかかっていた。僕もこのシーズンオフでそうなりたいと思った。このスターズ・オン・アイスでたくさん吸収したい」と話し、その演技を目に焼き付けていた。


そして、ひときわ大きな歓声があがったのが大トリを飾った羽生さん。昨夏にプロへ転向し、2年ぶりにこの舞台に帰ってきた羽生は毎日異なるプログラムでファンを驚かせた。公演初日の3月30日は『オペラ座の怪人』。2014-2015シーズンのフリーで演じ、羽生さんにとっては苦しい経験がよみがえるプログラム。それだけに思い入れも強い。「中国杯での衝突の事故や、病気やけがに苦しんだシーズンのプログラムだったので長い期間滑らないと決めて封印してきた。封印して以来、先日(2月26日)の東京ドーム公演で初めて滑って、このオペラ座の怪人をもっと完成させて、体力のある状態でみなさんに届けたいと思って滑ることにした」とこの曲を選んだ理由を明かした。
翌日は、真っ赤なサテンのシャツに青のネクタイを身にまとい、Adoの『阿修羅ちゃん』を披露。アップテンポな音楽に合わせた巧みなステップと自ら振り付けたダンスを観客のすぐ目の前まで近づいて魅せる羽生に、割れんばかりの歓声が送られた。演技後、「音が聞こえなくなるくらいに歓声がすごかったので正直すごくうれしかったです」と頬を緩めた。
そして4月1日、大阪公演の最終日は『あの夏へ』。アニメ映画『千と千尋の神隠し』に出てくるキャラクターを思い起こさせる衣装と切なく心に響く音楽にのせて幻想的な世界に観客を引き込んだ。3つの異なるジャンルのプログラムを披露したことについて「違うプログラムも見たいという声を受けたいと思って3つ披露することにした。」と明かした羽生さん。観客やファンに寄り添い、最高のパフォーマンスを追求する羽生さんらしい理由だった。
奥州公演、横浜公演と続いていくスターズ・オン・アイス2023。「それぞれのプログラムに気持ちを込めてしっかり滑りたい。楽しんでいただけたら嬉しい」と笑顔を見せた。

その他にも、日本勢ペア初となる世界選手権優勝で年間グランドスラムを達成した三浦璃来(21)・木原龍一(30)ペアや世界ジュニア選手権でアベック優勝した三浦佳生(17)、島田麻央(14)も出演。さらに世界で初めて4回転半を公式戦で成功させたイリア・マリニン(18・アメリカ)などによるグループナンバーも見どころになっている。


奥州公演 4月3日(月)~5日(水) 岩手・奥州市総合体育館 Zアリーナ
横浜公演 4月6日(木)~9日(日) 神奈川・横浜アリーナ