2021年のマスターズで優勝し、アジア人として初めてグリーンジャケットに袖を通した松山英樹選手(29)。今年4月に行われる大会で、これまで3人しか成し遂げていないマスターズ連覇に挑む。マスターズ制覇は念願だったと同時に日本ゴルフ界の歴史を塗り替える偉業。それにも関わらず松山選手は、自身の優勝シーンよりも、試合を終え目にした“放送席の涙”に感動したという。
石井大裕アナウンサー:
2021年はいろんな事がありましたね。
松山選手:
そうですね。(2017年8月WGCブリジストン招待から)3年8か月勝てなかった時はほんとにしんどかったですけど、でも久々に勝てたのがマスターズだったので「ご褒美来たな」みたいな感じでしたね。
「止まらなかったです、涙」
この大会、松山自身が最も感動した瞬間は、あの歴史的なウイニングパットではないという。
中嶋常幸プロ:
す、すみません・・・(涙を拭って)後半苦しかったから・・・(3人で涙を拭う)。
当時話題となった“放送席の涙”。松山選手の歴史的な偉業を見届けた放送席の中嶋常幸プロ、宮里優作プロ、小笠原亘アナウンサーは、そろって涙を流していた。
松山選手:
これを帰りになにかで見た時、それ見て泣いてました、僕。バァーって。あの姿を見た瞬間。
石井アナ:
自分の優勝シーンではなく、放送席のシーンってことですか?
松山選手:
そうです。自分の優勝シーンじゃなくて、放送席の中嶋さん、優作さん、小笠原さんが泣いている姿を見てダァーって。止まらなかったです、涙。
石井アナ:
マスターズで優勝して見えた景色は今までのゴルフ人生と違いました?
松山選手:
違ってないですね。変わるのかなとすごく思ったんですよ。「マスターズ勝ったからいいや」ってなるのか「今まで通り上手くいかなかったら怒ったりするのかな」と思ったら、今まで通り怒ったり、上手くいったら喜んでいる自分がいて、本当に良かったなと。それがなくなっていたらゴルフいつ辞めるのかなくらいの感じになるんじゃないかなと思っていたので。
松山英樹にとってマスターズ制覇は、ゴールではなく、あくまで通過点。昨シーズンの米ツアーは27戦に出場しトップ10入りは3戦だった。
松山選手:
2021年はマスターズですごく注目されたと思うし、そこがあるから良かったねとなるが、他の試合で安定して成績が出ていないので、安定してトップ10に入れるようになるとか・・・。そうすれば世界ランキングも上がってきますし、優勝する回数も増えていくと思うので。
チャンピオンズディナーは寿司か・・・和牛か・・・
ディフェンディングチャンピオンには大きな悩みがあるという。マスターズの2日前に歴代優勝者が集う伝統のチャンピオンズディナー。そのメニューは前年のチャンピオンが決めることになっている。マスターズ5回の優勝を誇るタイガー・ウッズは1997年、当時21歳で初優勝。翌年のチャンピオンズディナーではチーズバーガーやチキンサンドウィッチ、フレンチフライ、ミルクシェイクなどをふるまい、大きな話題となった。
松山選手:
何を出せば良いか全然わからなくて・・・。日本人だし、寿司がいいのかなとか思いますけど「寿司が嫌いな人がいたらどうしよう」とか考えちゃって(笑)。和牛とか良いのかなと思っても「脂が多いのが嫌だったらどうしよう」とか(笑)。
石井アナ:
日本中みんな楽しみにしていますよ。松山英樹選手が何を選ぶか。聞く人にも日本人、アジア人はいないし自分で決断していくわけですよね?
松山選手:
アダム・スコット(オーストラリア)とかパトリック・リード(アメリカ)に聞いて・・・「どうなの」とか。
「大谷選手はスーパーマン。記憶が薄れるのでやめてくれと(笑)」
松山選手同様、アメリカで活躍するメジャーリーグ・エンゼルスの大谷翔平選手(27)には、少々複雑な思いがあるらしい。
松山選手:
すごいな、スーパーマンだなと思って。メジャーリーグはマスターズのあと本格的に始まるので(2021年の日程はマスターズが4月8日~11日、メジャーリーグは4月1日~)、優勝した後にあれだけ活躍されると「記憶が薄れていくのでやめてくれ」と思いながら(笑)。「ちょっとだけでもいいから余韻に浸りたいんだけど」と・・・思っていました(笑)。
マスターズチャンピオンとして挑む特別な1年。長い歴史のなかで、ジャック・ニクラウス(1965年・66年)、ニック・ファルド(89年・90年)、タイガー・ウッズ(2001年・02年)と、3人しか成し遂げていない連覇に挑む。
松山選手:
これからもっとメジャーでも勝ちたいと思っていますし、その中で自信を持ってマスターズの週に入れるかどうかが勝負。連覇は僕にしかチャンスがないので、簡単なことではない、そんなのは分かっているんですけど、権利は僕にしかないので連覇は目指さないといけないなとは思っていますね。
■松山英樹
1992年2月25日、愛媛県松山市生まれ。東北福祉大卒。181センチ。2011年にアマチュアでマスターズ初出場。2021年、10度目の挑戦でマスターズ初制覇。